新年早々ランで犬にはねられ華麗に宙を舞ったばかりの私でしたが、こんどはドッグランで大きなオスのピットブルのボディスラムに遭いました。コディはそれ以前にも地面にころがってお腹を出し、好きなだけお尻の匂いも嗅いでもらってとどこまでも低姿勢だったので「大丈夫そう」と思っていたのですが、甘かったな。
歯をむき出して向かってきたきた犬とコディの間に入った時、スキー用のグローブをはめた手に衝撃を感じました。場が収まってからしばらくすると、左手が痺れてズキズキしていることに気付きました。手の甲に小さな穴が開いて血が出ていました。ちょこっと歯が当たっただけですがやっぱりすごい力です。
奇しくもこの日は夕方からの獣医さんのアポイントメントで、コディの去勢手術の日程を決める事になっていました。ランでこのように成犬オスから厳しくチェックされたのは初めてのことだったので、そろそろ潮時かも知れないと感じました。本当は月齢16カ月から24カ月の間でと考えていたところを、日程を早めて14カ月目(=今月)に行う事に決めました。
それにしても、この現象、アメリカだけかもしれないけれど、カジュアルな感じでピットブルを飼う人がとにかく多いように思います。またこの犬種は基本的にラン向きではないと思いますが、無理にランで遊ばせようとする人も目立ちます(今回の犬の飼い主さんも、自分の犬の様子は一応ちゃんと見ているものの、自分の犬が他の犬にものすごくマッチョにしているのが全く分かっていないようでした)。
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私はピットブルには特別な親しみを感じていて、それというのも以前、とてもお世話になった知人がピットブルの繁殖をしており、私自身沢山のピットブルと関わり一緒に遊んだりと楽しい思い出が沢山あるためです。それで、多くのピットブルと触れ合って私が思う事は、世間で「ピットブルは安全です」という人にもし出会ったとしたら、その人はピットブルのことをあまりよく知らないか、もしくは事実から目を背けているということです。ピットブルは本当に性格が良く、楽天的で人間に対して非常に従順で賢いので、教えてあげれば本当に様々な事が出来る犬達です。しかし、非常に強い闘争本能を持つように改良された過去がある犬種です。闘争心が強い個体は他の犬であったり獲物に類するようなものに出会った時にこれを発揮することがあります。
このタイプの犬をペットとして家庭に持ち込んだとき、稀にこの闘争本能が「よく分からないタイミングで」発揮されることがあります。それがこの犬種を潜在的に危うい存在にさせている。子犬の頃からきちんとしつけてそうならない犬に育てたい、と考える人もいると思いますが、ピットブルにとっての闘争とは本能的なもので激烈な欲求です。しつけで変えられると安易に考えることは危険です。いつも本当に優しくておとなしいピットブルであったとしても、一生のうち一度でもそういう闘争本能に火がつく境地に陥ったとして、たとえその1回だけであったとしても、まわりの人や財産に著しい危害を加えるのには十分なのだということを、飼い主がしっかり認識する必要があります。
それを踏まえたうえでピットブルと暮らすのに最もたいせつなことは、飼養管理(マネンジメント)を常にきっちりとやることといえます。周囲の人や動物も、犬自身も安心して暮らしていけるライフスタイルを維持するためには、無用な興奮や争いの可能性のある場所を避け、勉強を重ねながら落ち着いた環境下で丁寧に観察しながら犬を飼うことが不可欠です。
私とよく遊んでくれたピットブル。ツギハギだらけの顔を擦り付けてくるかわいい犬だった。
このツギハギ君も元闘犬で、負けたのでボロ雑巾のように捨てられたのをもらわれてきた犬。
人間が大好きで、とても良いコンパニオン・ドッグの素質があった。
今日はとりわけ長くごちゃごちゃとウンチクを書いてしまいましたが、とにかく日ごろ街や公共の場でピットブルがちゃんと扱われていないことが悲しいし危ないと思っていたので、考えていたことを書き連ねてしまいました。現状を見てると、自分なんか「シェルターでピットブルやピットミックスのアダプションを禁止しろ」と思う事もあります。
非常に残酷に聞こえますが、シェルターが機能すればするほど、レスキューの人達が頑張れば頑張るほど、無責任な飼い主達の間で「飼えなくなったらシェルターに連れてけばいいいや(だれかがなんとかしてくれる)」という考えになります。里子にもらったらもらったで「うちのはシェルターから来たから」と、問題行動を正当化する人が出ます。ピットブルとは、その犬種の成り立ちからなんだかずっとこの無責任の連鎖に翻弄されているところがあるように思います。数奇な犬達です。