ぼうし事件/体罰訓練

新しい車に自力で乗れない弱虫だと分かり、特訓中


 今朝、強風のドッグランで犬を遊ばせていたところ(寒かった!)かなり強い突風が来て、かぶっていた野球帽があっという間に20メートルほど向こうへ行ってしまいました。「あッ!」と声を出したところ、コディが駆け寄ってきたので、思わず「コディ君帽子取って!」と言った所、ぴゃ~っと走って行って拾い、私の手の上に持ってきて置いてくれるという出来事がありました。今まで、こんな口語口調でなにかさせようとしたこともなければ、帽子を「トッテコイ」させたことなどもなかったので、単語単語でというよりは全体の雰囲気で内容を把握したのでしょうが、通じた事にとてもびっくりしました。本当に、あまりにもタイミング良く現れて助けてくれたので、まわりのドッグオーナー一同から拍手が起こっていた(笑)。



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 NHK「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組で「ワンチャンスペシャル」が組まれていたので視聴しました。可愛いネーミングに反して内容が濃くて見応えがあった。フォーカスされていたのは著名なトリマーの方、悪性腫瘍専門の獣医さん、噛む犬の訓練士さん。

 訓練士は、北栃木愛犬警察犬訓練所の中村さんという方が取材されていました。所謂体罰込みの独特の訓練スタイルをされてるみたいで、かなり賛否両論ありそうですが、この人なりの方法で心血を注いで頑張っているんだということは「犬の遊びタイム」で、ファインダー越しに和犬がゴロゴロ出てくるのを見て感じました。どれも普通だったら殺処分になってるような犬ばかりに見えました。

 日本犬の「ヤバさ」って、実際「ヤバい犬」に遭遇するまで、伝わりにくいかと思います。私も、日本で知人のケンネルに居候していた時、出会いました。360°死角ナシ、どこからアプローチしても猛烈に噛みにくる、行きつく所まで犬格が荒廃したその柴犬の世話とトレーニングを手伝っていて、一般的に言われている犬のしつけ法がほぼ意味をなさない犬、特に洋犬を「ふつうに」飼い育て「ふつうに」躾けて問題なく暮らしていけてる殆どの愛犬家にとって、想像も出来ない世界観が和犬達の世界にあるんだと知りました。飼い主さんはわたしから見てもごく「ふつうの」愛犬家の方でした。曰く、洋犬的「ふつう」にかわいい仔犬を育ててたのに、いつの間にか半野生の猛獣になってしまったということでした。

 和犬とは、山の犬の気質を多く残した犬達で、そもそも愛玩ペット向けの犬ではないという認識をみんな新たにすべきだと思います。和犬種の代表、柴犬の話になりますが、北米の人々に「シバは、日本で最もポピュラーな犬種のひとつだよ」というと、ええっ!と驚かれることもあるくらい、上級者向けの犬種として認知されています。北アメリカで殖やされている柴犬は、日本で見るこれらの犬より全体的にずっとフレンドリーで従順な犬が多いですが、それを踏まえた上でも、尚「シバはテクニックがいる犬種」という認識があります。トレーニングが入りにくく、躾に失敗すると、容易に噛むようになります。長年プロトリマーをしているこちらの知人は、柴犬に三回、珍島犬に1回噛まれてから、アジア系のスピッツは全て断るようになったと言います。

 話を元に戻しますが、とにかく、一度人を噛んだ和犬は、かなりの根気とテクニックを費やさないと直らない(というか、普通は直せない)です。普通の飼い主は、そこまで待てず犬を処分します。この辺にも、訓練士が苦境に立たされる要因があると思いますが、トレーナーは既に犬がかなり荒れた状態から、それを「手早く直す」事を要求されることが普通です。理想は、正の強化を駆使して、行動学的見地からじっくりとリダイレクトしていく所でしょうが、状況が逼迫してくるとともに現実が迫ってきて、理想は霧散し二つの道しか見えなくなってくるのです。それは「犬が直る」か、「犬が消える」かということです。

 画面に映る一頭一頭の問題犬を見ながら、自分だったらどうするか、アプローチは、どんな道具を使うかとか、いろいろ考えることが多かった。私自身は、こうして薀蓄をたれる割には訓練法にはこだわりがなく、犬によると思っているし、ミーハーで、いいと思って調べた方法はなんでも試すので、今は主に正の強化+ポイント・ポイントで罰があることもある(但し直接大声を出したりして叱らない。罰の与え方には細心の注意を払う)というやりかたに落ち着いてきており、それで今の犬は殆ど何の問題もない犬になっています。しかしほぼ同じやりかたで躾けた先代のドーベルマンは、完全と言うには程遠い状態でした。

 そのことから、飼い主が用意できる環境はもちろん、遺伝、訓練を開始する時期、犬との相性、犬に副次的な情報を与える存在(例えば同居の家族。特に、子供とお年寄り)によって訓練環境が劇的に変化してしまう、飼い主一人が頑張っていても、犬は壊れていく状況が現実として起こりえる事は、よく分かっています。テレビに出ていた噛み犬の飼い主さん達も、おそらく皆かなり頑張ったけどダメで、疲れてしまい、それでも我が子を愛している様子が伝わってきて、テレビ見ててちょっと涙が出てしまった。

 ドッグトレーニングの方法論は星の数ほどありますが、①犬が人間社会の生活にきちっと適合出来て ➁正しく人とコミュニケーションがとれ ③飼い主さんも納得できて、精神的にも満足・安心させてあげられる、のが「良い訓練」の最低条件ではないかなぁ、と思いますが、こういう所は大型犬の飼い主だからでしょうか。「イヌ本来のQOLはどうなる、ヒトの都合の押し付け、傲慢」と言われればそれまでですが、大きい犬の場合、この要素を満たせていない犬(とその飼い主)の生活は破滅への綱渡りです。

 NHKのこの放送後も、一部の愛犬家、トレーナー界隈が騒然としている事を、自分の入っているFBグループなどを通じて知りました。シーザーミランにしても、この訓練士さんにしても、武闘派のトレーニング法はよく批判されるし、実際自分だったらこのやり方はしないだろうと思う事も多いですが、一人の人が誰かにお金をもらって、飼い主の人生と飼い犬の生命がかかっているプレッシャーの中、人生を投じて編み出してきた方法について頭ごなしにバカにしたり、中傷したりというのは違うんじゃないかな、とか、そんな他の人の方法を取沙汰してカッカするよりも、黙々と自分の訓練技術を磨いていくという方が、建設的じゃないのかな、という感想をもちました。

 しかし、天下の国営放送がこういうのを流すと、勝手に「体罰」の部分だけを抜き出して、ジャスティファイされたような気になり、マネする人が出てくるかもと心配もありますね。大昔に父の田舎で手ほどきを受けた、バリバリ昭和のボコボコ訓練(このニュアンス伝わります?)みたいなものも、国内には未だに信奉者がいるはずなので、その点だけはとても心配です。