2019年3月10日日曜日

サーチのやる気度テスト


 シェルターからの犬なども使い、野生生物保全活動に携わる探知犬を育てる団体Rescue to the Rescueが公開している、 サーチへのやる気評価テストがありました。ノーズワークやセントワーク、トラッキングなどのセントスポーツ(鼻関連の競技)に愛犬が興味を持ちやすいかどうかを知る良い指標になるのではないかと思い、以下にやや意訳気味ですが和訳を載せておきます。もし、興味がある人は、自分のイヌと一緒にやってみて下さい。テストは可能であれば2人1組で行い、1人が犬を補綴する係、もう一人がオモチャを投げる係になります。また、スコアが常に0から1の項目があった場合は、そこでテスト終了になります。

①報酬への意欲(動いているおもちゃ)※5回繰りかえし、その都度加点する。

犬に手に持ったボールを見せ(弾ませても良い)、犬の興味を引く。ボールを犬とは別の方向へ、且つ犬にとってどこに落ちたかが分かる様に投げる。この実験では、犬はただちにボールを追いかけることが許されている。注意:決して、声を上げて犬にレトリーブを促さないこと。注意2:犬はボールが投げられるところを目視していなければならない。



②報酬への意欲(動いていないもちゃ)※5回繰り返し、その都度加点。


①のテストと同じ題材を行う。但し、今回は犬は補綴しておく。投げたボールが止まったと同時に犬を放す。このテストは全部で5回繰り返し、スコアが常に0から1の場合、ここで評価を終了してください。




③報酬への意欲(障害物あり) 

犬を補綴し、目の前でボールを障害物の中に投げる(犬に、どこに落ちたかが見えるように)。ボールが落ちてから30秒間犬を補綴し、放す。犬が放されてから10秒以内にボールを探し始めない場合、指差し・声掛けを行い犬に探すよう促して良い。



④サーチへの持久力(報酬の位置が不明)

犬を補綴し、一人が手にボールを持っていることを犬に知らせる。もう一人が犬の目を塞いでいる間に、投げる係がボールを遠くに投げる(犬はボールが投げられる様子を見ることが出来ない)。ボールを見えない所に投げ、落ちたと同時に犬を放し、2分間探させる。声を掛けて犬にボールを探すよう励まして良いが励ました回数を記録すること。注1:犬が15分以内にボールを見つけられた場合は容易すぎるため、再テストを行う。注2:このテストは犬の捜索への意欲を推し量るもので、実際に対象物が見つけられたかは重要ではない。



⑤換算 
以上の4つのテストの結果出た得点を、下のスコア表に照らし合わせます。


 読んでいて面白かったのは、サーチワークという仕事を考える時、単に犬の報酬への情熱が高ければ高いほど良いということではなく、タイプの違うサーチワークへの適正や、ハンドラーの熟練度などとの塩梅もあるのだと知ったことです。たしかに、例えば山などの広いエリアをどんどん動いて探し回るのと、交通量の多い公園のトレイルを入念に調べたりするのとでは、要求される力が異なるのは納得できます。そういえば、コディを飼う前に訪問した西ドイツ系ジャーマンシェパードの繁殖家の方も、サーチ&レスキューの人達には、ミディアムからミディアムハイ・エナジーの犬を譲ると言っていたのを思い出しました。鼻を使っての慎重な作業の上で、極端なエネルギッシュさは必ずしもプラスではないのでしょう。

 シェパードの多くは30ポイント前後から上に落ち着くのではないかと思いますが、レトリーバーはもちろんのこと、テリアやスパニエル、ハウンド系、最近はピットブルなどもセントスポーツに参加しているのを見かけるので、知られざる匂いのプロというのは意外なところに隠れていそうに思います。



2019年3月7日木曜日

ドッグラン名人になる


 犬オタクの間ではわりと否定されがちなドッグランですが、「自分の犬が気軽にランに行けるタイプだ」ということは、特に都市型の生活をしているドッグオーナーにとっては大きな安心材料です。私も、最初の愛犬との東京生活を思い出すと、ちょっと家を出ても自然のトレイルなどはあるわけもなく、散歩もリードをくるくるまとめた状態で延々とコンクリートの歩道を歩くというスタイルになりがちでした。自転車での引き運動以外で走れる場所などもなかったので、そこそこ活発なドーベルマンの運動意欲を満たすためには、当時住んでいたマンションの屋上や夜更けの工事現場で遊ばせたりして(←良い子はマネしないでね)だましだましやっていました。

 そのような生活スタイルの中にあると特に、ドッグランは犬にとっては自由に走り回れる貴重な場と言えます。ほかにも例えば、長いドライブの道すがらランに寄って軽く体を動かさせて…、とか、空いてる時刻をねらって子犬の社会化に役立てたり…など、場面に応じて様々な使い方が出来ます。飼い主にとってもほかの飼い主と情報交換が出来たり、友達が出来たりと、地域の社交場としての機能もかなり高いですよね。ランは、その是非はともかく、愛犬家生活上のオプションとしてすごく便利だということは確かだと思います。

 私は現在の犬を迎えてからはじめの3年半、散歩の一環として雨の日も風の日も雪の日も毎日1~2回ランに通いました。また自分の犬が来る前も、ひとりでランに通って柵の外から犬の動きを見るという変態的な時期を過ごしていたこともあります。こうしてここ数年でこの「ドッグラン」という場所にまつわる悲喜こもごもをある程度知り尽くした気がするので、ここで改めて「どうやったら上手に楽しくドッグランとつきあっていけるのか」というところについて考えてみたいと思いました。


1-犬の遊びについて詳しくなっておくこと

 まず重要な前提として、犬の遊びをよくわかっておく必要があります。私個人の感想ですが、ランでのいざこざのほとんどが、飼い主が「犬の遊び」をよく理解していないことに端を発しています。これについては言葉で説明するよりも下の2本の動画を見るほうが分かりやすいかもしれません。この動画のポイントは、犬同士の「MARS」が確認できれば、たとえば激しく噛みあうマネ、戦うマネ、追いかけっこ、押さえつけ、マウンティング、唸ることや吠えることが介在したとしてもそれは良い遊びである、というところです。「MARS」の簡単な説明は動画の下に続けます。




 MARSとは、メタシグナルアクティビティ・シフトロール・リバーサルセルフハンディキャッピングの頭文字を合わせた標語です。メタシグナルとは犬が「これは遊びだよ」と相手に伝えるためのサインで、無駄にぴょんぴょんした動きや派手な表情、プレイバウなどがそれにあたります。アクティビティ・シフトは、遊びの途中でゲームが変わる事です。たとえば追いかけっこからレスリングにシフトしたり、ひとつの遊びに固定しないということですね。ロール・リバーサルはそのまま、役割の交代です。でも自分で見た限りではいつも同じ役回りをすることを好む犬も多いので、これは犬にもよる気がします。セルフハンディキャッピングは、強い方の犬がわざと力を出さないで、相手のレベルに合わせることです。次に、二本目の動画を見てみましょう。




 この動画では、犬同士の遊びが白熱してきてちゃんとうまく遊べているのか不安になってきた時に、一度犬を離し→再び同じ遊び相手の所に戻るか見る、という簡単なテストについて取り上げています。このあたりはみんな自然とやっていることなので、わざわざ教わる事でもないよと思われるかもしれないのですが、これが大型のオスの成犬同士でガンガン遊んでいる所などに出くわすと、たとえ知識があったとしても、本能的に不安を覚えるんですよね。うちの犬ものんびりした性格の割にかなり激しく唸り声をあげながら遊ぶので、あとでそれをFBに投稿した知り合いのところに「なぜ自分の犬がアタック(原文ママ)されているのに止めないのか?」「危険なシェパードをランから追い出せ」というメッセージが来たことがあります。

 「私の犬は怖がりで、まずこうやって遊ぶまでに至らないんだけど」という人もいるかと思います。子犬や若い犬でランへの心の準備が出来ていなかったり、生来繊細な性格の犬なのかもしれません。まずは自分の友達で、とても優しい犬を飼っている人に頼むなどし、落ち着いた小グループでの遊びを続けて自信をつけさせてあげることが大事かと思います。それから改めてランにチャレンジするか、もしくは「ランは荒っぽすぎてうちの犬には向かない」と、はっきり判断を下すことも大事なことだと思いました。


2-「飼い主の倫理観を尊重して愛犬の行動をシェイプする

 過度のマウンティング、トリーツを持っている人を付け回す、遊んでいるほかの犬の集まりについてまわり大きな声で吠え続ける、弱い犬のボールなどのおもちゃを奪う、嫌がる弱い犬を執拗に追いかけて地面に押さえつける、などの行動は犬の世界ではわりとふつうだと思うのですが、人間の目から見ると「いじめ」や、下品に見えたりと、倫理的に誤った行動ととられます(「犬の世界ではふつう」と言う理由は、これらの行動をしていて、その後ケンカになったというところを殆ど見たことがないためです)。

 また犬の世界には俗にいう「みそっかす」みたいのも存在している気がして、いじめられやすい犬はみんなに小突かれ続け、泣きながらキャンキャン逃げ回り、またそれを面白がった他の犬にタックルされて転ばされるというのも、わりとよくある光景です。でも、自分の犬がそういう目にあって平気でいられる飼い主はいないと思います。人間の倫理感が、瞬時に「弱いものいじめはだめ」と考えるからです。

 これらを踏まえて、上述したような行動、特にいじめっ子になりがちな犬の飼い主は、犬の自然な行動がどうのとか細かいことを言わずに、「社会生活を営む上でしてはだめな行動」と割り切ってトレーニングを行うことが大切だと思いました。もちろんこうして、犬の自然なふるまいを阻害してまで遊ばせる必要はないと思う人もいると思います。そう思った場合は、行かない選択をすればよいだけです。ドッグランとは、究極的には飼い主のための場所であり、そこに来る人間同士の関係を円満に保つことが大事だと言えます。そのためにはマナーが重要です。

 かくいう私の犬も、若犬の頃から時々この「弱い犬をダッシュで追いかけて地面に押さえつけたい」という強い欲求を見せる事があり、基本、ランでは絶対に目を離さないでいました。「追いかけたい」という意思が宿ると眼付きが変わるので、いつもそのアイデアが浮かぶ0.5秒前、というところで呼び戻すことで工夫していました。マウンティングについても、「やめなさい」と言えば、どんな遠くにいても即座に中止するように教えました。これはたまたまうちの犬がリコールや遠くからのコマンドでも反応する犬だったので出来たことですが、それでも潜在的に他の犬や飼い主の脅威になりえると思っていました。出来るだけそういう行動をしないようにトレーニングを頑張ること、もしそれでもだめだと判断したらいさぎいよくランから退く、ランじゃない別の遊びを開拓するというその見切りも、大変重要なポイントではないかと思います。


3-他の飼い主に寛容になる。積極的にコミュニケーションをとる。

 これはヒトの子育てをやってみてあらためて分かった点でもあるのですが、ヒトの育て方も、イヌの育て方も、100人いたら本当に100通りのやりかたがあります。中には、「貴殿のやり方だけはムシズが走って居ても立ってもいられぬ」と思うような飼い主に遭遇することもあるでしょう。私だって、ふだんはわりと温厚なほうですが、件のピットブルの飼い主に関してはいまだに根に持っているし。

 そういえばコディが若犬の頃、ベンチに座っているお姉さんの膝に泥のついた足を置いて伸び上がろうとして、その人の読んでた本で頭をバシッと叩かれたこともあります。このように、ランという場所は「しつけ」に関して自分とは違うメソッドを持った人、違うメソッドで育てられた犬と出会うことが日常茶飯事なので、そういうのも含めて「広義の社会化である」と容認できる人に適していると思います。ドッグトレーニングを真剣にやっている人がドッグランに否定的なのは、このような見ず知らずの犬や人からの影響が看過できないレベルというのも、大きいのではないかと思います。

 またここは私が多くの人と意見が違うと感じる点でもあるのですが、ランは公共の場所なので、トレーニングトリーツやオモチャを持ってくることも本来自由であるべきだと思います。よく「みんなで遊ぶ場所におやつを持ってくるなんて」とか、「オモチャはケンカのもと」と言って、上述したような物品を持ち込む人を敵視するドッグオーナーがいますが、まずは自分の犬に「おやつを持ってる人を付け回さない」「おもちゃをドロップ、leave itする」というマナーを徹底的に教えるべきところではないでしょうか。

 当然のことですが、そもそも持ってこないということが一番賢いに決まっています。しかし、そういうオーナーにはそれでも持ち込むための、なにか理由があるのだと思うし、公共の場なのだから、それは自由であるべきです。するとランにホカホカのマクドナルドを持ち込んだうえ、よってきた犬達に怒る人(信じがたいですが実際に遭遇した)なども登場するわけなのですが、こういった事を人のせいにして熱くなるか、冷静になって「愛犬のトレーニングのチャンスだ」と考えるかで、長い目で見ると成果が変わってきます。

 また変な飼い主を見つけたら、木の陰でヒソヒソしているだけではなく、出来る範囲で本人にうまく説明して分かってもらう努力をするのも大事だと思います。ランの環境がトータルで良くなることが、結局は自分の犬のためになるのです。私はまずその努力をしてみて、それでも改善しない場合は、たとえ友達がいても、まだ何もトラブルが起こっていなかったとしても、その日のランは終了、としていました。与えられた状況下でありえる危険の可能性についてすぐ察知出来て、回避策を打てる、というのは愛犬との暮らしの中でいつも最重要な「リーダースキル」といっても過言ではないと思います。




 ところで、幸運にもドッグラン漬けといっていい幼少期を過ごしたコディですが、3歳半を過ぎたころからランへ行っても殆どほかの犬と遊ばなくなりました。コディも人間なら30代、パーティーだ飲み会だと友達と騒ぐモードを卒業して、自分がほんとにしたいこと(=私と何らかの共同作業すること)にフォーカスする時期に入ったのかも知れません。面白いのが、この「犬と遊ばなくなった時期」と「外ですれ違う犬に警戒するようになった時期」が殆どシンクロしていたという点です。3歳半から4歳の間のどこかの時点で、コディは大人の犬になった、と解釈しました。

 ②の2段落目で書いたことも、自分たちがランへ行く機会を減らしてきた大きな理由のひとつです。記述の行動は実はシェパードという犬種の中ではけっこうよく見られるもので、狩猟本能から来る動きですが、他の犬や飼い主にとってはハッキリ言ってはなはだ迷惑でしょう。このあたりのバランスも考慮しながら、「自分の愛犬かわいさ」の世界から一歩踏み出し、「自分たちはランの秩序にとってマイナス因子になっていないか」という疑問をいつも持つことの重要性を、自分の犬からも教えてもらった気がします。



2019年3月1日金曜日

いいことにフォーカスする


 
 犬のフォーカスではなく、私(人間)の話です。

 ここのところ、やっぱり「今の自分が出来る『いいこと』にフォーカスする」という考えを強く意識しながら生活するのは大事だなと、再認識しています。不肖・私自身の場合「自分に出来るいいこと」というと、現時点では仕事や私生活で(自分の子供含む)次の世代をよく教育すること、自然観察のレポートを書いたり(☜実は私の趣味的ライフワーク的活動です。Caudataという日本の生物系専門誌に掲載して頂いてます。興味のある方は是非)、犬と一緒に訪問活動等、生活の余剰エネルギーを社会奉仕の形にして還元することがそれに当たるでしょうか。犬のことに関しては、気付いたことはなるべくこのブログに書きたいと思います。そうすれば、あとで誰かが見て、その方の知識の足しとか、反面教師にしてくれるかもしれません。

 こんな事を考えているのも、常日頃の「生活の中で気を取られそうになる事・特に『かわいそうなできごと』というのが存外多い」という現実をひしひしを感じているためです。たとえば最近だと、やれ子供の虐待だ、犬の虐待のニュースだと、気になって、自分でもなにか発言せねばならないような気になることがすごく多いです。でも、そういう時はこう考えます。「私はただ家で子供を育て犬を飼っているからというだけで彼らのこと何も知らないじゃないか」と。そんな私の発言は、周りの人にとっては価値が少ないはずです。そしてそのような時はむしろ原点にかえって、やっぱり「今の自分の立場『だから』できることはなにか」というところに集中するべき必要性を感じています。