2019年2月8日金曜日

ドライブとエナジー



 セラピーのリクエストが来ていました。行き先はホスピスでした。よく考えた上、今回は見送ることにしました。今のコディはエネルギーがありすぎるように思うので、訪問中いつ・なんどきでも200%信頼がおける、というレベルに犬が達するまで、終末医療関連の施設は訪問しないでしょう。患者さんたちが本当に貴重な時間を生きている場所です。どのような形であれ、犬がその時間の質を落とすような事は万にひとつ、いや億にひとつでもあってはいけないからです。

 ホスピスへ行くにあたって、犬たちはおよそ三週間にわたる追加トレーニングを受けます。このほかにも、目的に応じて訓練を受けねばならないシチュエーションはいくつかあります。機会は多くない(無いほうが良い)ですが、銃の乱射や自然災害の後に活動に行くユニットなども、ハンドラーの勉強と訓練ならびに、犬のストレス耐性の選考テストを更に受けます。以前ドッグランで出会った介助犬のハンドラーの方が言った、「犬は、テストに受かってからが本番よ。」という言葉を思い出します。ひとつの課題をクリアしても、またより複雑な課題が現れて、常に勉強が続きます。


 話は変わりますが、エネルギーと言えば、作業犬界隈の人々の書いているものを読むとしばしば「ドライブ」と「エナジー(エネルギー)」という単語が出てきます。「ドライブのある犬」とか「ハイエナジーな子犬」とかいう風に使われますが、人によってことばの遣い方が微妙に異なるような気がしていました。混同しがちなこの言葉について、自分なりにいろいろ見聞きした情報をもとに意訳してみると

 ①ドライブ=犬の本能に根差した動機 作業欲求につながる
 ②エナジー=犬の魂に根差した欲求 感情のパワー(動機を実行する力)

みたいなところでしょうか。こうしてみると良い作業犬というのは、ドライブとエナジーが高いレベルでバランス良く備わっていてることが大事だと分かります。ドライブには種類(フード・ドライブとか、レトリーブ・ドライブとか)があるとされますが、その中でも作業犬に必須なのはプレイ・ドライブ;狩猟への欲求だと言われています。簡単に言うと食べ物よりもおもちゃに執着するタイプの犬がこのカテゴリに含まれます。

 先祖代々作業目的で増やされてきた系統の犬というのは、このエナジーレベルとドライブの度合いに相関があって、程度の差はあれ、生まれてきた時点でこれらを併せ持っていることが多いですね。でも、ほかの系統の犬や、ミックス犬の場合でもハイエナジーかつハイドライブの犬は居ます。反面、こういう犬の中でエナジーレベルは高いのに、ドライブはそんなにない・なく見える、という犬も、わりとよく見かける気がします。


フレンチブルドッグによるIPO3の実演

 ポイントは、「エナジー」は生まれ持ったもので生涯変わることがないその犬の性質ですが、「ドライブ」に関しては、犬のもともと持つ興味の方向性に合わせて人がディレクションを与え、共同作業の経験を通して高めてあげることができるという点です。ドライブが高まると、「もっと作業をして、成功したい」というルーティーンが生まれ、ある作業を成功させるというその過程において、エナジーの捌け口も生まれます。レスキューやシェルターから犬が貰われてくるとき、しばしば「オビディエンスのクラスを受けてください」と言われるのは、こうして犬のドライブが高まっていく過程において、犬の中で飼い主自体に対する期待と執着(=ヒトから見た「絆」)が強まるからだと思います。

 一般的に作業犬とされる品種じゃなくても、ハイエナジーな犬は、ドライブの方向性を見極め、能力を育ててあげることで本当に色んなことが出来るようになる可能性を秘めていると思います(上のビデオをご覧下さい)。ただ、これらのダイヤの原石達は日常生活のなかでは扱いにくい傾向にあると思うので、純正なコンパニオン・ドッグを目指したいという場合には、五段階評価で言えばドライブ3/エナジー2、みたいな犬が良いのではと思います。[note:]上のフレブルは体格やハンドラーの様子等を見るに、もともと優れた犬が優れた訓練技術のある人に育てられたものと推測します。やればどんなフレブルでも出来る!という意味ではありません。

 なんてなことを考えながら、日曜日の犬トレ通学していました。犬の「ドライブ」と車の「ドライブ」をかけたつもりだったんですが(え~)、、、行って帰って2時間以上、山を越えて美しいバージニアの田舎道を走るので、本当にさまざまなことを考える時間があります。子供漬けの1週間の貴重な癒しと言えます。




2019年2月5日火曜日

雪あそび



 冬の雑木林は綺麗です。コディはキツネやシカの痕跡を探して忙しくしています。こういう活動は、楽しいだけなのかと思いきや、けっこう緊張するようです。時たまブルブルブル!と大きく体を振るったりして、気を紛らわせているのを見かけます。別の日に見ていたトラッキングのビデオで、インストラクターが「匂いの追跡はストレスフル」と言っていたのを思い出し、そうなんだと思いました。

 興味本位で匂いを嗅いでいるのと違って、自律してある匂いに集中しそれに全神経を集中させた状態を持続することは、かなりの忍耐力を要するでしょう。でも、地面に鼻をつけてゆっくり慎重に動物の気配を追いかけている時の姿はなかなか様になっています。この慎重さ丁寧さを練習でも発揮してくれたらいいのにな~と思います。

 こういう時に不意打ちで「スワレ」の指示を出してみたりすると、一瞬、どんな報酬があるのか思い巡らせている目でこっちを見てからゆっくり実行します。犬の頭の中にちっこい天秤があって、いつも飼い主の乗ってる皿に(僅かでも)比重が置かれた状態にしておきたいです。うちの犬にとってキツネやシカの誘惑は手強く、まだまだ修業が必要でしょう。




 この日子供と雪遊びをしていて思ったのですが、1匹の犬にこうしていろいろ教えたりして育てる事は、雪だるまを作ったり、砂の城を建てたりすることと似ているなという事です。100パーセント完璧だ!と思えるものが出来上がることは、なかなかないし、一生懸命やってても、知らない誰かに踏み荒らされてしまったり、突然の波にさらわれることもあります。幸運にも最後まで制作を続けられたせっかくの「作品」も、いつかは自然に帰っていきます。

 雪や砂をむりに何かの型にあてはめようとするよりも、手元にあるこの雪の美しさ、浜辺の砂の暖かさをただ享受しながら生きるのがいい、そう思う人も沢山いると思います。そういう人にとっては、たとえば私が常に犬にあれをしろ、これをしろとやるのを見て「不毛だ、可愛そう」と思うかもしれません(実際、身近な人にそう言われたこともあります)。しかし、「この砂で城を建て、登って景色が見たい」と思うタイプもいます。だれかが作りかけで放棄した作品のひび割れを埋めながら、形良く仕上げることが好きな人もいます。すごく人ぞれぞれです。

 特になんのオチもない話なのですが、、、雪の雑木林を見ていると、自分の飼い犬との巡り合わせというのは、この無限にあるように見える雪の中からの、偶然のひとつかみと出会うのに等しい、稀な出来事なのだから、大切にしなければならないような気がします。

 上の写真は、夕方の散歩の様子です。ひもつきボールがしばらく届かなかったので、トレ散歩のご褒美はコングのボールに靴ひもを通したもので代用していました。積極的にひっぱりっこをする事はないですが、こうしてボールの部分に食いついたまま、引っ張ってもらって歩くのが好きなようです。碓氷峠を超えていくディーゼル機関車の気分でした。1キロくらい飽きもせずこのまま歩いていました。実に嬉しそうな顔をしています。


かわいいDella


 モンディオリングのクラスが続いています。2時間の授業の間、自分が直接コーチしてもらえるのは20分程度で、それ以外の時間は全て他の人の練習を見ることに費やされるのですが、これが意外と勉強になります。この競技はヒールは右側でも左側でもよかったり、所謂IPO等で見られるようなぴっちりと横に着くツケはしなくても良かったりとゆるい部分もある反面、声での指示と体を使った指示(手によるサインなど)を一緒に出してはいけない等、今までと少し違ったルールがあります。

 今まではごく自然に声と手の合図を同時に使って犬を動かしていたので、いざ声の合図だけにしてみたら、コディは実は「フセ」をちゃんと分かってなかった(!)ことが判明しました。それに、今までどんな時も楽勝でできていたセパレーション(ハンドラーと1分以上離別する。ハンドラーは見えないところに隠れる)で失敗したりと、「え~!」と思うような行動を連発するので、びっくりしました。最近ちゃんとしたトレーニングを全然受けてなかったことを思い出させられたし、改めて定期的にクラスとか、それに類する場へ行くことや、環境や題材を変えて、色々な状況をヒト・犬共に経験することの大切さを思い出しました。



 
 いちおダブル育児ブログなので(たまには)人間の方の子供のことも書きます。ワシントンDCで行われた、ワシントン日本商工会の新春祭りに初めて足を運びました。ワシントン日本商工会は、DC地区のビジネス・コミュニティー内のつながりを深めながらアメリカ社会における文化交流と理解の促進を目して設立された組合で、対外イベントの新春祭りが特に有名です。来場者も年々増えているそうです。前にボランティアで通っていた国立動物園のすぐ傍のマリオットホテルが会場でした。

 娘はここで初めて、自らの力でお賽銭をあげて、おみくじを引きました。結果は「小吉」。チビだから、小さい吉が大きさに釣り合っています。もちつきや、ししまいにパックンしてもらったり、和太鼓の演奏を見たりと(オニやかみなり様が大好きなのでとても喜んでいた)、貴重な体験を沢山することが出来た。大人の言う指示を聞いて、その通りに出来るようになってきているのがいいと思いました。犬トレで言うところのインパルスコントロールはまだ全然だめですが、いずれ出来るようになるでしょう。犬とか他の生き物に比べ、霊長類の桁違いの「脳力」を日々見せつけられます。




 仲良しのお友達とこっそりホテルの階段に登っておしゃべりとかしていました。耳をすますと「ねんど持ってる?」とか、「わたしは階段からジャンプしたことある」「おもちが大好き」とか聞こえてきて、3歳4か月でも、ちゃんと話題があることに驚いた。

 家の子供も含め、このくらいになると皆アメリカの保育園(プリスクール)に通っているので、まわりのお友達は、だんだんにメインの言語が英語に切り替わっていっています。娘も幼稚園(キンダーガーテン)に進むころには、英語脳になっていくのかな。そんな彼女ですが、コディにトンカツもぐら先生という独創的なあだ名をつけたり、蝙蝠の写真を見て「ねずみドラゴン」と言ったり(←これはなんかすごくわかる)、おもしろい日本語の感覚をもってるので、忘れちゃったらもったいないなと思っています。