2015年11月19日木曜日

いろいろ再構築の時



    家の犬「コディ」は生後10ヶ月の半ばに入った。年齢的なものなのか、ここへ来て様々な変化が起きている。なかでも目立つのは、彼の心境面の変化だと思う。明らかに大人の犬へと過渡期を迎えている感がある。具体的には、周りにあるもの全てに対して懐疑的な目を向けるようになった。でも、今までのいわゆる「恐怖期」とは少し違うのかなあと思うのは、この懐疑の対象に見知らぬ人や物だけでなく、子犬の頃からずっと慣れ親しんできたものも含まれているところだ。なんというか、身の回りにある物事ひとつひとつについて、もういちど彼なりの再考察&意味づけを行っているように見える。

    例えば、コディは最近クレートトレーニングをやり直した。コマンドでクレートに入り大人しくしていることは、しつけの中でもいわば「基本のキ」であり、彼も生後12週で「スワレ」の次に覚えた事だったのだけれど、それがどういうわけか出来なくなった。というか、やらなくなった。家人の言うところによるとある晩、何時ものように夜寝る前「クレート」とコマンドして、ナイトキャップ代わりのオヤツを手にクレートの扉を開けて待っていたが、いつまでたっても犬が来なかった。おかしいと思って見回したら、コディが家人をじっと凝視したまま、むこうの玄関の石のタイルの上に伏せていたという。まるで「今日から自分の寝場所はここにするよ。」と言っているようだったらしい。なんだか人間のようでその情景を想像したら笑ってしまったけど、よく考えたら、それは挑戦だ。その日から家人とコディのクレートトレーニングのやり直しを手伝った。まったく以前のようにスパッと号令に従うようになるまでには6日かかった。

    変わったことはほかにもある。今まで嬉々として通っていた犬のデイケアについても、「行きたくない」と決めてしまったらしい。これは徐々に忌避反応を示すようになったという感じで、今ではデイケアのエントランスに入る前に勝手にクルッとUターンして、自ら車に戻っていこうとする始末だ。子供が小さくて常に手が足りない我が家にとってはこれはけっこう真剣な問題で、目下、どうアプローチ&改善(?)するかを考えている所だ。

    とにかく何かにつけて「既に見知ったものとそうでないもの」「自分の家族とそれ以外」、「家族の中での自分の可能性」みたいなものにフォーカスしているのが垣間見える。おそらく犬にとっては難しいと同時に繊細な時期でもあると思うので、変に腫れ物のように扱ったり、逆に無意味なルールのゴリ押しをすることのないよう気をつけてハンドリングしていかないとなあ、と気持ちを新たにしている。




 今日の写真は車で五分ほどの市中心街の、オフィスビルに囲まれた駐車場の屋上。ついに日没が4時台になってしまったので、暗くなっても遊べる場所ということでここに行きついた。最近だいぶ知恵がついてきて、ボール投げやトッテコイ遊びも、同じ形式のセットが3回以上続くと飽きることが出てきた。

 コディは、名実ともにティーネイジャーになったのだ。自分がそこに突っ立っているだけで、彼にとっては最高のごほうびだった時期は終わったのだと、認めなければいけない。自分がティーンだったころを思い出したって、親とキャッチボールなんて、つまらんし、ダサいし、かったるくてやってられなかったと思う。そこに例えばお小遣いがからめば話は別だったわけで(笑)。なので、オヤツを日がわりにしたり、オモチャを複数用意したり、ベーシックなオビディエンスの動きと組み合わせたりして、一回一回変化をつけたり、リワード面を充実させたりして遊ぶようにしている。コンクリの上を活発に走り回るような運動はブリーダーの忠告に従って、だいたい15分以内に留めるようにしている。ここでの遊びが終わったら、オフィス街を軽くジョギングしてから帰宅する。自分にとっては、しばし赤ん坊と離れられる息抜きタイムだ。





2015年11月14日土曜日

1日「シェパード」体験へ



    このあいだ「シェパード」と辞書をひいたら、「可算名詞」と書いた横に「羊飼い 牧羊者」と書いてあった。世間一般では、「シェパード」という言葉がほとんど独り歩きして、ジャーマンシェパードを指している感があるけれども、シェパード犬とは羊飼いの犬、牧羊犬の事で、なにもジャーマンシェパードだけに限定するわけではなかったのだ。考えたらしごくあたりまえの事だけれど、もともと牧羊の文化を持たない日本人ならではの固定観念だったかも知れない。

    冴えないぼやきはさておき、今回、個人でヒツジを飼っている方の所で家の犬「コディ」とその親戚の子犬達を対象に、そんな牧羊犬としての能力が彼らにどのくらい残っているのかを審査してもらえることになった。週末、ぐんぐん短くなる日を追いかけるように、西へ向かって車をとばした。80キロほど走る間に灰色の住宅地の光景がだんだん緑になり、そしてのどかな田舎の風景に変わった。


見覚えのある顔、アローお姉ちゃん

メエエ メエエ



 牧羊犬の適正診断はまず、ヒツジのいる柵に犬を入れ、離れたところから犬がどのような行動を見せるか観察する。同時に羊飼いが杖で地面を叩き、犬に、杖へ敬意を払うよう促す。この時点で、ヒツジに対して攻撃的な行動を見せた犬は除外されるらしい。コディはヒツジに大注目&大興奮で、珍しくワンワンと吠え、瞳がらんらんとして今にもヒツジを丸飲みしそうに見えたので(笑)一同若干心配になったけれど、羊飼いと杖への注意力が高かったので、審査続行となった。また、ヒツジは意外とタフなんだそうだ。少々、犬にどつかれた位では、なんともならないそうだ、、、と言うのはオーナーの談。


しっぽをブンまわしながら羊の後を行くコディ。



 羊飼い役の人が、犬に適宜指示を出していく。と言ってもまだ何も知らない子犬なので、「そうそう」「優しく」「ダメダメ」など、主にヒツジに対する基本的なマナーを教えることがここでのメインだった。

    話を聞いていて面白いなあと思ったのは、ポインティングやレトリービングと同じく、ハーディング(ヒツジをまとめること)も強く本能に根ざしていて、犬一頭一頭のもともともつ資質が重要なんだそうだ。トレーニングをほどこして、後天的に教える事も出来るけれど、やはり生まれつき「動く生き物の集団をまとめたい」という、強いモチベーションを持っている犬がいて、本格的なハーディング競技や実務にはこういう犬達が使われるそうだ。


なんだかそれらしくなってきた?



 結論、コディの牧羊犬としての資質は???

 審査をしてくれた方によれば、ホビーレベルのハーディングなら十分通用するということだった。ヒツジへの興味、忍耐力、エキサイティングな状況下でも号令への注意力を失わなかった事、それと群れからポンと一匹飛び出したヒツジをさっと連れ戻す動きが出来た事が評価された。マイナス点は「遅さ」。コディはそもそも牧羊犬としてはオーバーサイズなのだ。これは自分で見ていても、確かにそう思った。しかし競技レベルはムリでも、いずれ庭の広い家に住む機会でもあれば、小さいアヒルかガチョウでも飼って、追わせてみるのも楽しいかもと、夢が広がった。

 余談だけれどイヌにとってヒツジ追いは随分ブレイン・エナジーを消耗するようだ。コディがヒツジの柵の中にいたのはものの20分たらずだったが、そのあと帰りの車の中でも、帰ったあとの家でも、グーグー熟睡していた。これを見ると以前ハーディング・コンペティションのチャンピオン戦で見たボーダーコリーなどプロの牧羊犬達は、とてつもないアイロン・ドッグ達だったのだと改めて思った。ワーキングラインに限って言えば、とてもじゃないけど一般家庭では飼えない代物だと思う。