いつにもまして文字ばかりのブログです。政治経済系のトピックが苦手な方はすみません。
しかも子供もコディくんも出てきません(一体、何のブログなのだ)。
さて今年の上半期は、アジア人を狙った暴行事件やいわゆるヘイト・クライムの件数が全米で上昇傾向にあることがニュース等で取り沙汰されていたことは多くの人が知るところです。アメリカで暮らすアジア人として、またアジア系アメリカ人を育てている人間として、「アメリカにおけるアジア人差別」は大きな関心事のひとつです。
先に短くまとめると、私が日々ニュースや読み物を読んで思うのは、私のようないわゆる「パンピー」ごく一般的なアメリカのアジア系が気を付けた方がいい差別というのはおおまか言って二種類あり、①「racism(いわゆる、古典的人種差別)」と②「systemic / institutional racism(制度的・構造的な人種差別)」です。
一般的に差別と言うと、前者がよりショッキングで話題性もあり、取り沙汰されることが多いですが、学校や会社といった生活の重要な拠点の中で静かに行われる後者のようなアジア人差別についても、十分注意を払うべきだというのが個人的な考えです。それぞれの差別について考えてみます。
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①「racism(いわゆる、古典的人種差別)」
古今東西の先進諸国の例に漏れずアメリカにも人種差別の歴史がありますが、2021年版・アジア人差別の概要を知るためにまず、どういう場所で、どのような人々によって、アジア人差別が起こる割合が高いのかを知ることは私達の生活に直接かかわりのある話題と言っていいでしょう。
私もりっぱな中年社会人なので、「人種差別は起こっている!人種差別なくそう!」と気勢をあげることよりも、現実問題としてどこでどんな状況が危ないのかとか、詳細を知る事でよりくわしい差別の実像を掴み自分や子供の実生活の危機管理に役立てたいと思いました。
ところが私が普段触れるニュース等のメディアでは、加害者の性別や人種、教育の程度や経済レベルなどの犯罪者のプロファイルを知るためのごく基礎的な事項すら、包括的に書かれているものがありませんでした。特にニュース番組では、アトランタ襲撃事件(CNN英文記事、BBC日本語記事)の様な特定の非常にショッキングなニュースがタイムラインを席巻する傾向があり、そのためアジア人差別、ヘイトクライム、ゼノフォビアなどはなんとなく白人特有のものという印象を持っていました。
そこで休日に合衆国司法省のウェブサイトに行き、なにかおもしろい統計はないかなぁと漁りました。そして、Hate Crime Victimization, 2004-2015というページの中にある、Hate CrimeVictimization, 2004-2015[PDF]というドキュメントを読みました。少し時間の経っている資料ですが、とても興味深いことがいろいろ書かれていました。「アメリカ合衆国は毎年25万件のヘイトクライムが発生するが、54%は通報されない」とか、「人種バイアス(人種への固定観念)が主な動機で、単純な暴行が9割を締めること」などはとりたてて真新しいものではありませんが、特に私の興味を引いたのはp6の表9「暴力的ヘイトクライム被害者の居住区と地域 (2011-2015)」の部分です。
ヘイトクライムの発生現場は西海岸と中西部が多く、次いで南部、北東部と続いていました。居住場所の区分は都市と郊外が殆どで、田舎はヘイトクライムの発生率はぐっと落ち込んでいます。なんとなく南部の田舎の方が差別などは起こりやすそうに思っていましたが、数値をみると、実態はほぼ逆であるということを学びました。反対に、アメリカの東海岸や西海岸の都市部というと非常に先進的で教育が行き届き、文化的にも豊かな面がクローズアップされがちですが、こういった差別の問題であったり、非常に深刻な薬物汚染や貧困問題を抱えているなど、スポットライトの当たらない現実もあるのだと思いました。
次に「都市内部の人種差別」についてくわしく知るために、比較的近隣の大都市であるニューヨーク市警(NYPD)の犯罪レポートをみてみました。これは20年度中に逮捕者が出た93件のヘイトクライムについての報告書で、うち20件がアジア人を被害者としたものでしたので、加害者は、白人が10%、ホワイト・ヒスパニックが25%、ブラック・ヒスパニックが10%、黒人が55%となっていました。数字を見ると、ニュースでよく見聞きする「白人によるヘイトクライム」は1割ほどで、加害者の9割は、ヒスパニック系と黒人からなっている事がわかります。
テレビ等で見聞きするニュースでは、ヘイトクライムの犯人は白人のことが多いですが、実態とは隔たりがある可能性があると思いました。記憶に残る所では、昨年10月NYでにジャズピアニストの海野雅威さんを集団暴行し大怪我を負わせた犯人達も黒人でしたが、ほとんどの主要メディアでは加害者の人種のまでは言及がありませんでした。たとえばこの犯人が白人の若者達などだったならば、「白人原理主義者の若者が暴行」などとなって、もっと大々的にニュースになっていたのではないかなと思います。
NYPDサイトにはヘイトクライム・ダッシュボードというものもあります。
カーソルを動かしてみると、けっこうまだまだゲイ差別があるんだなあという印象です。LGBTQ文化を育んできた歴史あるニューヨークですが、まず、逆風が強いから、立ち向かう方もそれだけ強く抗い、文化が花開いたという経緯もあるのではないかと思いました。
また、群を抜いて、いかにユダヤ人というものが嫌われているかがわかります。全米で抗議活動が多発した2020年以来、反ユダヤ主義が勢いを増す傾向があり、私が引っ越す前住んでいたレストン(北バージニアの郊外でもひときわリベラルな街)でもショッピングセンターに反ユダヤ主義のシンボルがスプレーで描かれるという前代未聞な事件がありました。差別とは、「歴史的に下位にあると見なされた人々がとくべつ成功してお金持ちになったりしている時」に、ひときわ強まるように思います。ユダヤ人もそうですし、男性のゲイなどもそうであり(あまり知られていないがアメリカのゲイカップルは経済的に非常に裕福な人が多い)、新たなアッパーミドル層として台頭してきているアジア系も同じカテゴリとみられるのは、想像しやすいですね。
②「systemic / institutional racism(制度的・構造的な人種差別)」
上で述べた通り、実はこの「歴史的に下位にあると見なされてきた者が成功してお金持ちになる」という状態が、いまのアメリカにおけるアジア系の現状にかなり的確に当てはまる状況です。2019年~現在の家庭当たりの収入の中央値を比較したセンサスのグラフを見ると、アメリカ合衆国において「アジア系が突出して成功したグループである」という事がはっきり分かります。
北バージニアにおいても、特にフェアファックス郡中部にベトナム系、南部に韓国系や中華系、西部~ラウドン郡東部にインド系など、移民をオリジンとした一大コミュニティが形成され、なかでも圧倒的な人口密度を誇るインド系の集まる地域などは、地域民に「リトル・ボンベイ」などと揶揄されることすらあります。勤勉で仕事に一生懸命従事し、たくさん税金を納め、子供達は学校のテストスコアを大幅に引き上げ、平和的で犯罪発生率も圧倒的に少ないアジア系は地域経済にとってプラスの存在と考えられています。
一方、北米では主に大学入学の時点や雇用の場面で、各人(実際には、各人種グループ)に与えられる社会的な機会を均等にするために制定されたきまり「Affirmative action(積極的格差是正措置)」「equal employment law(雇用均等法)」などが定められています。一流大学に入ったり、ホワイトカラー職につくときに、人種によって所謂「ゲタをはかせてもらえる」人が出てくる法律で、かなり賛否両論があるようです。個人的には、努力と才能を頼りに大学進学や就職をめざすアジア人やアジア系アメリカ人にとっては、潜在的に極めて差別的になり得る法令ではと思っています。
こうして社会のシステムに組み込まれ、密かに進行しているのがアジア人にとっての「systemic / institutional racism(制度的・構造的差別)」です。この話をするためには「Critical Race Theory(批判的人種理論)」という非常に賛否両論ある学説への理解も不可避なのですが、その話もするとかなり長くなってしまうので興味のある人は山ほど本やレポートがありますので、読んでみて下さい。日本でもここ20年ほどで取り沙汰されるようになった話で、一部、日本語で読める文献などがあります。☞批判的人種理論に関する一考察(大沢[1996])、批判的人種理論の現在(桧垣[2011])。
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北バージニアに住んでいる人なら、感謝祭でもクリスマスでも正月でも、煌々と灯がともっている夜更けのアジアスーパーを見たことがあると思います。そんな店の裏手で、積み上げた段ボール箱の横に腰かけて煙草をふかしている移民一世のおじさんやおばさんは、「自分は働けるかぎり働いて、子供達にはなるべく高い学歴をつけて、なんとかいい暮らしを」と朝も夜も、文字通り身を粉にして働いていたりします。こう書くのは、私自身の家族にもそういう半生(義父)を送った人がいるためです。デビの飼い主のお父さんも、コディのシッターさんもアジア系ですが、親の代は皆そうだったといいます。
これらの努力の結果、多くの家族が移民後1~2世代で生活の基盤を安定させてきました。義父の場合は、ソ連を亡命してからおよそ50年、2世代をかけて、世帯の経済状況がやっとロシア革命前のレベルまで回復したと言います。義父によると、共産主義革命で全てを失ってから回復までに、合計5~6世代がかかったとしており、その間に多くの家族や親戚達の命が貧しさの中で不当に失われてきた、と言います。
共産主義体制下では、その地域に根差してきた代々の固有の土地や財産は全て没収され、その理念とは違って、現実では全ての人が貧しくならざるを得なくなります。多くの家系は貧困の為離散してしまい、非常に多くの人が新天地で無一文で身を立てていく道を選ばざるを得なくなりました。
アメリカ社会においても、われわれの社会は社会的流動性(social mobility)が乏しい、だから政府は社会保障をより手厚くすべきである、と言う言説があり、私がコミュニティカレッジで受け取った教科書にも大々的なセクションを割いて載っていましたが、実際に共産主義体制の国から来た義父はこういうものを目にするたびに「これは文字通り"真っ赤な"嘘である、『アメリカン・ドリーム』はあった、この目で見てきた」と必ず熱弁をふるいます。それから「こんなことをさも本当のように学校で教えているようでは、これからのアメリカの若者が心配だ」といつもとても憂いていました。
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北米でアジア人の移民が増え始めたのはおよそ過去60年ていどであり、移民としての歴史は比較的短いものの、その間、アジア系人口はモラルを持って勤勉に働き、世代を超えた資産を構築してきました。そんな中でアジア系に対し「お勉強ができるから」「お金持ちだから」と、見えにくいところで少しずつ足枷をはめていくていくことであったり、社会的に「困っている人がいる」ことを大義名分として、時に人生をかけて移民し働いてきた人々の血のにじむような過去の努力や積み上げた富を都合よく取り上げること、そういった活動を政策として国家が主導する事は、倫理的に正しい行いと言えるでしょうか。
余談:メディアバイアスについて
2020年以降、アメリカの報道番組にはちょっとがっかりさせられる事が増えました。特にこちらに来た当初(10年くらい前かな)から親しんできたCNNやMSNBCなどのニュースは、昔からまあまあリベラルでしたが、子育てで忙しくて数年見なかった間に、言論がかなり極端なものになってきている事に大変驚きました。というか、最近はどのメディアを見ても、情報の中立性を保つことが難しいという印象です。ニュートラルなことを言っているんじゃ、視聴率がとれなくなってしまったのでしょう。最近はAll Sides Mediaというオンラインのニュースサイトを見ているのですが、ひとつの事象に対して左・右両翼のニュースソースからの記述を読むことが出来るので便利です。
やや急激な左傾化はメディアだけでなく、州の政策や公立校の運用などにも及んでいます。たとえば先日、うちの地域の高校では、トランスジェンダー学生を保護する法が議会を通過して、性自認にもとづいたバスルームの使用、スポーツチームへの所属、呼称などについての配慮を(それらの情報を親に開示することなく)学校に求めることが出来るようになりました(→CNNの記事、→NewsWeekの記事)。
私自身、学生時代はホモやオカマや半陰陽までもがごろごろしている学校の研究室でお世話になったので彼らに対する違和感はないどころかどちらかというと寧ろインサイダーであるのですが、「トランスジェンダーが転生後(?)の性別のチームでスポーツ競技に参加する」というのは彼ら本人に言わせても本当におかしく、生物学的に見ても全く公平性を欠いていると思います。
トランスジェンダーと言ってもほとんど女性化している人からほとんど「女性の服を着た男」の人まで個体に大幅なばらつきがありますよね。特に女子のリーグは危機に晒される可能性があります。この考え方は端的に言えば小さい頃から、朝暗いうちから起きて一生懸命時間とお金を投資して練習に励んできた女の子達がスポーツを楽しむ権利は、トランスジェンダー者がありのままの自分として生きる自由を享受する権利よりも重要ではないと政府が言っているということに等しいわけで、スポーツが大好きな娘を持つ親としては到底看過できないものであります。


