2014年10月9日木曜日

FRANCE



 以前フランスに居た時の写真が出てきた。これはパリのとあるギャラリーの戸を開けたら、大きなマスチフの大きな尻が出迎えてくれた時の光景。今オーブンから出てきたばかりみたいなこんがり香ばしそうな毛の色と、堂々たるタマタマが妙にマッチした立派な犬だった。彼は、いわゆるパリジャンらしく来客の扱いは手馴れたもので、来る人一人ひとりに鼻スタンプのギフトを送る、「鼻配りの出来る男」だった。

 イヌ好きの間ではよく知られた事だけれど、ヨーロッパ、中でもフランスやドイツでは「犬権」が非常に尊重されている。結果、街中が犬だらけだ。一番驚いたのは、同じくフランスの雑踏の中で、黒い巨大なボルゾイが紐もつけずに飼い主の後をきちっとつけて歩いていた事だ。ふたりはおいしい匂いの漂うカフェの脇を通り、鳩のたむろする広場を抜けて、地下鉄の駅にすーっと吸い込まれていった。サイトハウンドの中でも特にこの犬種に馴染みのある人なら、それがどんなに凄い事か分かってくれるかもしれない。



2014年10月4日土曜日

TOWPATH



 現在自分では犬を飼っていないくせに、コーヒー片手に時々近所のドッグランのベンチに座っては、もみくちゃで遊んでいる犬達や彼らの社会を垣間見るのが好きな私です。怪しいですね。

 その犬「トーパス」に初めて出会ったのも、そうして柵の外から犬達を眺めていたある日のことでした。子犬の頃、虐待を受け、最後は走っている乗り物から道路に投げ捨てられて、何日も生死の境を彷徨った犬だそうです。自力では抵抗したり逃げ出したり出来ない、素直で、無垢な子犬を痛めつける人が世の中にはいます。きっと彼ら自身も昔無力だった頃に、同様に痛めつけられたことがあるのかも知れません。よく、憎悪は社会の中で伝染病のように伝播していくと思う事がありますが、ものを言わない動物達はしばしばその連鎖の終着駅になる。今を明るく生きてる姿に、心打たれました。