2015年6月14日日曜日

ウィリーのボール

これ以上近づくと逃げてしまう。

 ドッグランでもどこでもいつもかたわらにボールを携えているメスのジャーマンシェパード「ウィリー」。ベンチや木陰で涼む時も、大切なボールを片時も離さず、もはやボールが体の一部になっているようだ。

 ウィリーがレスキューされ新しい飼い主にめぐり合う前、ある家のキッチンの片隅に置かれた、大きな体がぎりぎり入る程度の古びたクレートと、餌皿、ゴムのボール1個がこの犬の持ち物の全部だった。基本的な世話する以外、誰もこの犬の事を気にかけないその家でウィリーは、いつもボールを口に咥え、遊んでくれる誰かが現れるのを待っていた。何年もの間辛抱強く待っていたので、口のまわりに白髪がちらほらしだした頃、ウィリーは「不要な犬」としてシェルターに連れていかれた。シェパード犬専門のレスキューグループに引き取られ、新しい家庭へ行くための訓練が行われたけれど、今まで「ボール」と「キッチン」と、そこから続く裏庭が世界の全てだったウィリーは、見知らぬ人を極度に怖がるようになっていた。前の飼い主を思わせる大柄な男性とみるや口から涎を流して恐れ、逃げ惑い暴れるウィリーにはもはや「ふつうの生活」を送ることが難かしく、この犬の管理はシェパードの更生を長年やっているフォスターファミリー(一時預かり家庭)の手に委ねられ、そのままその家庭に引き取られたのだった。

 ほぼ毎日ドッグランで見かける風変わりなシェパードにそんな悲しい過去があったとは知らなかったので、彼女が一生懸命(ほとんど脅迫的に)ボールと共に行動しているのを見る目が変わった。ボールは彼女にとってライナスの毛布よろしく、心のよりどころだったようだ。しかし、どうしてこんな話になったんだったかな。そうそう、うちの犬「コディ」が、何度体ををリンスしてやっても、ランへ行くたびに鬼ごっこで不必要に転げまわり労力が不意になる・・・というのをぼやいていた時、ウィリーのオーナー兼トレーナーであるリーさんが「走り回って汚れている犬は、幸せな犬よ!」と元気付けてくれたのが、きっかけだった気がする。「世の中のどこかには、こうして遊ぶチャンスのない犬もたくさん居るのだから」と。

 因みに現在のウィリーは、いまだにかなりシャイではあるものの、毎日たっぷり一時間のボール遊びとトレーニングの結果、気が向けば初対面の人にもそっと挨拶にくるほどまでに進歩している。





2015年6月9日火曜日

CGCのクラス、他



 北バージニアは連日最高気温が30℃前後、時には35℃近くまで上がり、かなり暑くなってきました。しかもこんな時に限ってエアコンのキャパセター(コンデンサ)が壊れてしまったんですよ。交換費用として300ドルが一瞬で飛んで行きました。近々、犬連れでロードトリップへ行きたいなと思い少しづつやっていた倹約計画も、こうして一瞬で振り出しに戻ったわけであります。

 家の犬「コディ」の5ヶ月目はそこそこ順調に過ぎて行っています。今週から最寄りの犬の学校でCGC(ケーナイン・グッドシティゼン)のクラスへ行き始めたほか、別の学校で中級オビディエンスのクラスも、試しにとってみました。CGCはアメリカの畜犬団体AKCが定めた、家庭とコミュニティの中で暮らすうえで良いマナーを身に付けている犬を評価するプログラムで、合格するには10項目のテストをパスする必要があります(10項目については、日本の個人の方のウェブページで、とてもよくまとまっているものがありました。こちら)。このテスト、要求されている各項目は比較的シンプルなんですが、衝動の抑制(インパルス・コントロール)を必要とするものが多く、コディのような子犬や若犬にとってはけっこうハードルが高いと感じています。例えばクラスのはじめにインストラクターがサラッと「皆さん、これから7週間の間、あなたの犬がリードを付けているときは片時もヒールのポジションから離れないようにしてください」と指示を出したのですが、それって言うはやすし、行うはきよし難しだよな~!と、一緒にクラスをとっているコディの親友、デヴィちゃんの飼い主と顔を見合わせました。次のクラスまでの一週間はリーシュウォーク強化週間として、おやつを片手にがんばろうと思います。




 リーシュウォークの練習は実践あるのみ、ということで夕暮れのワシントンDCはアダムスモルガン地区へ。デュポンサークルの噴水のまわりに大勢の人が集まって、ほぼ無言でワサワサと体を揺らしあっています(ときどきキャーという歓声も聞こえる)。何をしている所だと思いますか?

 これはサイレント・ディスコという最近流行り始めたアクティビティで、皆で一か所に集まり共通のアプリや専用のポッドキャストにつないで皆でグルーヴを楽しむ、というものです。個々人のイヤフォン意外には何の音響機材もないので騒音もほとんどないし、路上飲酒禁止のDCなのでアルコール・フリーで、なかなかクリーンなイベントだと思います。室内でもないから踊り放題、汗かき放題。


コディ君も(座ってみてるだけだけど)参加しました。
コディは、なぜか知らないけどゲイのお兄さん達に人気なのです。



 話題その2。週末は銃火器の展示即売会を見に行きました。あまり知られていませんが、こういうショーやエキスポは犬連れOKのものが案外多いです(念のため、事前に電話で確認を)。この日は管理人が探していた目当ての品も見つからず、日曜日の遅い時間で程よく人のはけた会場をのんびり回ることができました。


退役軍人のオジサンに愛嬌を振りまくコディ。
この方は軍用犬の世話もしていたそうで、色々面白い経験談も聞かせてくれた



 話題その3、昨日のコディ。71パウンド(約32キロ)になりました。朝ドッグランで彼の口をのぞき込んだ人が「あらまあ!この子大きいのに、まだ子犬の歯してるわよ!!」とびっくりしていましたが、そうなんです。歯の生え変わりが遅いので、ちょっと心配していました。でも、その直後に異変が起こったんですよ。


下から新しい歯がどんどんせり上がってきてますね。

 遊んでいる間に下の犬歯が両方とも抜け落ちました。今日も今日とて、デヴィちゃんと取っ組み合いをしている最中グラグラになっているのを見つけたので、そっと引っ張ってみたのですが、下の方で繋がっているようだったのでそのままにしていました。こんなにすぐ抜け落ちるもんなんですね。


歯が抜けて、えらい、えらい。
コディ「デへへへ」

 歯の他にも、ランで他の犬のマーキングあとを嗅いで、その上に自分のオシッコをひっかける、という行動もこの日から始まりました。他の犬に対してマウンティングするのもこの一週間でけっこう頻繁に見かけるようになりました(これはトラブルの元になることが多いので見つけたらやめさせています)。家では自分のシッポを追いかけてクルクル回っていたり、タオルにくるまって寝ている所などはまだまだ赤ちゃんのようですが、確実に成長してきているようです。