2015年3月31日火曜日

コディ、牧場公園へ

ジャーン 


 ひとつ前のノートで「近所の牧場公園へ行った」と書いたその日の備忘録を。バージニア州、メトロエリア郊外にあるこの公園はフライングパン・ファームパーク(フライパン公園)といい、1920~50年代に活気のあった地元の小さな農場が、その役目を終えた後、みんなの公園として生まれ変わった場所である。小さいながらウシ、ウマ、ヒツジや家禽などのコーナーがあり、馬術競技広場や遊歩道、パーティ会場などが併設され、納屋には昔バージニアの特産であったリンゴからソーダを作っていた、古い機械類が展示されている。そんな地元の人の憩の場となっているこの公園では、誰でも飼われている動物のすぐ近くまで行って触れ合う事が出来るのも魅力のひとつとなっている。動物達は皆健康状態もよく、よく人に慣れている。この日は天気も良かったので、コディに動物達を見せてやる事を目的に訪れた。




 はじめに気付いたのは、これら産業動物の匂いは、それを初めて嗅ぐ犬にとって「かなりすごい」らしいという事。コディは動物の柵に近づくだけで20分くらいかかっていた。その時間の大半は地面や空気の匂いを嗅ぐことに費やされていた(この時、あまりに息をスーハーさせていたので、鼻が少しカピカピになってしまった)。たしかに人間でも「ああ牧場の匂いだなア」と分かる程特徴的な匂い、犬にとっては強烈にエキゾチックな臭気なのかもしれない。

 次に、ブタが強いということに気が付いた。その場にいた仔牛、ウマ、ヒツジなどの間をじゅんぐりに歩いて回ったが、体は一番小さかったブタが意外にも一番気が強く、うちの犬の真正面に仁王立ちで、柵の間から鼻を突きだし、なんとなく挑戦的にしていた。




 ブタの気迫にやられたのか、コディは隣にいた仔牛にも消極的になってしまったようだった。上の写真の→の物体は、コディの鼻先の、そのまた影になる。それがカメラに映るかギリギリの所まで下がって眺めていた。コディはまだ、自分の母親より大きな生き物を見たことがなかったので、当然かも知れなかった。一方管理人はウシが好きで、以前のブログでその名も「ウシが好き」という無茶なエントリーをしたためたこともある程、ウシを見ると心がうきうきしてしまうのだが、その理由のひとつはウシの我慢強く、優しい性質にあると考えている。仔牛は、コディが怖がっているのを分かっているように、そっと近づいて鼻をクンクンさせていた。


 コディがくるのを柵の向こうでのんびり待っているウシちん

「こわくないんだよ 」

「あなたずいぶん小さなウシね」

 意を決して接近するイヌ。ウシの方も待ってました!とばかり、さりとて何をするわけでもなく(笑)互いに見つめ合っていた。コディは仔牛の間で有名になったらしく、いつの間にか柵の中に居た他の仔牛達も見物にあつまっていた。ずんぐりした所と毛の質感が似ているから仲間だと思ったのだろうか。この時ふと思い出したのだけれど、ウシはけっこう好奇心の強い動物なのだ。ずっと昔管理人が小学校に上がる前の事になるが、親戚の家の近くの牛小屋のそばで転んで泣いていた時、小屋の中の肉用の仔牛達がみんな集まってきてじっと自分を見ていた事が思い出された。




 納屋の中へ入った。保温されている一角があったので犬をベンチに乗せてやりのぞき込むと、大きなヒツジがにゅーっと立っていた。時々急に大きな声でメェー!というこの動物にまたも及び腰になるコディだったが、ヒツジの方も訳の分からない毛むくじゃらが急接近してきて警戒したのかもしれない。




 因みに彼女が警戒していたわけはこれ↑。足元に生まれてからまだ日も浅そうな双子の仔羊がいたのだった。まだヨロヨロしていて赤ちゃん臭く、可愛らしかった。彼らもいつの日にかお母さんのような、威厳あるヒツジに育つのだろうか。




 ニワトリ、アヒル、シチメンチョウやクジャクなどの家禽コーナーへと歩を進めた。鳥は小さいし匂いもマイルドなので怖くないと踏んだのだろうか、トコトコと接近していくコディのリードを慌てて戒めた。管理人が個人的に牛馬やヤギ・ヒツジなどよりも危ないと睨んでいるのがこの「ニワトリのオス」なのだ。この写真の真ん中に写っているやつなんか、クチバシの一突きでコディの鼻の穴を3個にするパワーを秘めているに違いないのである(偏見)。余談だが当地では感謝祭(Thanksgiving day)の日の朝、ホワイトハウスで大統領による2羽のシチメンチョウの「恩赦」が行われるイベント(turkey pardon)があり、「恩赦された」鳥達はしばしばこの農園で余生を過ごす事が知られている。だからもしここで白いシチメンチョウを見かけたなら、彼らはサンクスギビングデーの生き残りかも知れない。


北バージニアの、始まったばかりの春を満喫した(?)コディ。「一休み」



 帰宅後、犬はくたびれていたように見えたので、練習もかねてクレートの中へ入れた。今日は大体1時間静かにしていることが出来た。最近気付いた事なのだが、この犬はテレビに興味があるらしく、つけてやると大人しく見ている。はじめは犬だからやはりスポーツを?と思い、アイスホッケーの試合中継などを見せていたがいまいちノっていなかったので、色々チャンネルを変えてみたところ、家のリモデリングの番組(大改造!ビフォーアフターみたいなやつ)が一番反応が良かったので今日はそれをつけていた。この後そっと様子を伺いに行くと、テレビを横目に寝っ転がりながら水入れの水をぺろぺろ飲んでいたので衝撃を受けた。一体どこでこんな深夜帰宅後のサラリーマンのような行動を身に付けたのだろうか。





2015年3月29日日曜日

D.C. 凧揚げフェスティバル、ほか

朝10:00、お祭りが始まった直後


 コディの三ヶ月齢を目前にした最後の週末。これと同時に管理人の「犬・育休」も、いよいよ終わり間近となってしまった。そこで金、土、日と、社会化ラストスパートと称して、ワシントン・ダレス国際空港近くのコンベンションセンターで行われたスーパーペットエキスポ・2015、ワシントンDC中心街で行われたDC・凧上げフェスティバル、それから近所の農場公園などへと繰り出していた。

 スーパーペットエキスポは年に一度のペット関連の用具や餌の見本市で、それ以外にも作業犬のデモンストレーションがあったり、リードをつけた一般の犬も一緒に入場できる、なかなか楽しいイベントになっている。

 凧上げフェスティバルは、年々有名になっていく印象のある「DC桜まつり/National Cherry Blossom Festival」の一環として、毎年ナショナルモール周辺で行われる愛好家の集まり。みんなで凧揚げしているのは牧歌的印象だけれど、結構シリアスな競技などもあるらしく、このためにわざわざ遠くから参加する人々もいるそうだ(長くなったので農場公園については、別記にします)。


エキスポで出遭った素敵なプードル


 ペットエキスポでは、商品に触らないようにさせる「leave it」のコマンドの効きが不十分なことと、どんな犬とすれ違うか分からないという点が不安要素だったけれど、こういうセッティング下でシャイな犬、防衛的な犬、怒りっぽい犬など様々な成犬の態度に触れるのも多分いい勉強になるだろうと思い、極度に興奮している犬以外とは、挨拶してもいいかどうか聞いたうえで、できるだけ触れ合わせるようにした。まだ子熊のようで可愛く見えるコディは会場でも沢山の人に撫でてもらったり、オヤツを貰う事が出来たけれども、他の人に触ってもらう前に「スワレのコマンドを入れてください」と、いいタイミングで&かつポジティブな感じでリクエストするのが難しく、これは今後の課題になった。




 凧上げフェスティバルでは、上空にある大きくてバタバタと音を立てるもの(例・・・飛び立つ大きな水鳥、旗など)が苦手と既に分かっているコディにとっては少々ハードル高いかなと思ったけれど、DC各所に掲げられたアメリカ国旗や強風にうなりを上げる凧の群れ、祭りムードに盛り上がった人々と興奮した犬達の間でシャッフルされた結果、帰る頃には「がんばればなんとか共存できるかも?」という雰囲気にはなっていた。この日はあまりの寒さに人間(♂)の方が根を上げたため、ほんの一時間半ほどの滞在になってしまったけれど、なかなか有意義な経験になった気がする。

 多種多様なものが混在する都市の雑踏を歩くのは犬にとっていい刺激になるので、記憶が薄れない来週中に、またもどってきて復習することにした。上はこの時の管理人とコディ。遠近もあるけれど、コディが11週目にしては大きい仔犬だということが分かる写真。毛並みのせいか、毛色のせいか、シェパードの雑種とか、ロットワイラーの雑種、チャウチャウ犬ですか?と聞かれたことも複数回あった。もっとジェネラルな質問である「何犬ですか?」と聞かれる事が一番多いのだけど、詳しく説明しようとすると話が長くなりがちなので、時間が惜しい今は(自分でも感じワルイなあと思いつつ)「ロング・ヘアのジャーマンシェパードです」と答え、会話を短く切り上げている。そのうち、犬の周囲へのマナーや、拾い食いの危険性、リードの引き等を気にすることなくのんびり散歩を楽しみながら、道すがらの人々とのんびり犬トークを楽しめるようになりたいものだ。




 凧揚げフェスティバルの日は帰宅してから、たっぷり昼寝タイムをはさんで、それから近所の量販店で行われているパピー・クラスに参加した。コディは、先生の話半分で、目の前にいた可愛いイングリッシュ・ラブラドールレトリーバーのピカルディちゃんと目が合うのを、辛抱強く待っていた(笑)。クラスの間中おりこうだったピカルディちゃんはコディの事を「毛深いヤボな男」と思ったようだが、飼い主のカップルはコディの事をいたく気に入り、ピカルディをお嫁にあげてもいいわ!と、さっそく彼女の将来を勝手にアレンジしていた。

 もう、すっかり親の心境なのだ。管理人が初めての犬を飼った時は中学生だったから、まわりの大人達が犬を飼うと皆急に自らを「○○(犬の名前)のママ・パパ」と言い出す気持ちが分からなかったが、30を過ぎた今、徐々にその心境が分かる様になりつつある気がしている。仔犬と向き合う事によって、こんな風に時の流れ(と自分が年をとっていること)に向き合う瞬間も出てきたりするので、悲喜こもごもである。


2015年3月24日火曜日

友達ができた

お尻を並べて水たまりの水をのぞき込むコディとデヴィ。

 先日、コディと共に近所のスターバックスの脇に座ってコーヒーを飲みながら、そこを通りかかるランダムな人や犬と触れ合わせるということを行っていた最中、うちの犬と同じくらいの年齢に見える、とてもかわいい仔犬に出会った。この犬の名前は「デヴィ」といい、聞いてみるとコディよりも3週間年上のメスのオーストラリアンシェパードだった。薄い青色でちょっとクレイジーな感じの目と、シッポのないおしりをクネクネと振りながら飛びついてくる様子がとても愛らしい反面、かなりバイタリティがあり活発で永遠に走り回っていられるうえ、遊び方自体もけっこうハードなので、飼い主のお兄さんはデヴィの遊び相手を探すのに苦労しているとのことだった。



遊びの合間のプチ勉強タイム。やはり3週間の差は大きかった。

 そこで2匹を遊ばせてみると、やはり牧羊犬同士だからかすんなり気が合ったようで、すぐに仲良くガルガルと遊び始めた。といってもあちらの方が年上だし身軽なので、うちの犬はすぐひっくり返されたり、耳やほっぺたを引っ張られたりしていた。しかしそのうちデヴィが攻撃からパッと走って逃げてもまたすぐ円を描きながら戻ってくると学習したらしく、落ち葉の上にじっと低く身を伏せて興味を誘い、彼女がやってきたところを狙い撃ちにするなど、彼なりに頭を使って攻防しているのが分かって面白かった。

 実はコディもこれまでに「パピープレイデート」等、仔犬同士のお遊びグループの様なものにも幾度か参加していたのだけれど、なかなかうまくいっていなかったのだ。というのも同年代の他の仔犬とくらべて体格が大きいため、特にここ最近はいじめっ子の様なプレイスタイルばかりを繰り返すようになってしまっており、少し気になっていた。だから、デヴィのように小柄でも高い身体能力とバイタリティのある犬によく遊んでもらうことで、上になったり、下になったり、力のさじかげんを学べることはとても意味があるように思えた。



この水飲めるのよー!と、泥水をすすめるデヴィ。
マネして飲んでいたコディ、あとでお腹をこわしてしまった(T_T)


デヴィとキキ

 夢中で遊ぶ犬の様子に気を取られていたら、あたりはあっという間に真っ暗闇になっていた。デヴィの飼い主キキがたき火を炊いてくれたので、三月の夜風に漂う冬の残り香を嗅ぎつつ(火で炙るソーセージを持ってこなかったことをかなり残念に思いつつ)、楽しい時間が過ぎていった。





2015年3月20日金曜日

生後10週目



 家から出てすぐのあまり人通りのない脇道に、ひと株だけスノウ・ドロップ(マツユキソウ)が生えている。 今までもなごり雪のまばらなこの時期になると、その隙間からひっそりと1・2輪だけ綺麗な花を咲かせていたので、風が吹くと小さなベルのように揺れるかわいらしい佇まいが、冬を乗り切った証の様な気がして、毎年楽しみにしていた。そしたら今年は雪が多かったせいか、奮起して?5つも花を咲かせていた。これは過去3年間で最多の開花数だ。そんな今日は米国ではFirst Day of Spring、春分にあたる日なのだ。外はダメ押しのように雪がちらついている。




 コディは生後10週目に入り、体重は12キロ弱になった。大きいようだけれど、他の兄弟と比べると小さく、目測1週間分ほど成長が遅れているのでちょっと心配している。道で出会ったジャーマンシェパードを連れたお姉さんが、おやつにカッテージチーズを食べさせると良いよ、耳も早く立つよ。と教えてくれたのだが、コディはお腹があまり丈夫じゃないので、食の冒険はまだあまり出来ないのが残念である。

 雪のちらつく今日の様な日は表を歩き回っての散歩は難しいので、街へ行って犬入店OKな本屋、服屋、雑貨屋等を主に巡ることになる(写真はAntholopologyという服屋で)。コディはまだオヤツやハンドサインのガイドが要るけれど、日常生活に最低必要と思われる、12のコマンドがだいたい出来るようになってきた。今週末から来週にかけては、何故か苦手でなかなか上手にできない「マテ」と、「スワレ」・「フセ」・「タテ」の区別をはっきりさせること、またトリミングに慣れる練習(特に爪切りとシャワー!)を主にやっていきたいと思う。手への甘噛み癖、オヤツを貰う時歯を使いがちな事、不可思議なものや、フラストレーションを感じた対象物(特に他の犬)に対して吠えてなんとかしようとする事は、シェパードの仔犬の間では比較的よく見られる傾向だという。だからといって放置していいとはあまり思えないので、今後もトレーナーの人にいろいろ話を聞きながら、改善していけるようにがんばりたい。





2015年3月15日日曜日

BONNIE



 犬を迎えるためにと前々から準備して今月いっぱいとっていた休みも、気が付くと半分が過ぎてしまっていた。最初の頃は「一ヶ月も赤ん坊犬につきっきりでいたらノイローゼになるかも」と懸念していたけれど、ここへきてもうあと二週間しかないぞ!と慌てるとともに若干寂しい気分を味わっているのは、仔犬の成長の速さを目の当たりにしたせいかも知れない。コディは耳をすますと、めきめきと音が聞こえてきそうなぐらいのスピードで大きくなってきている。仕事や用事で家を留守にするようになれば、成長期の一瞬で現れては過ぎ去っていく変化を見逃してしまうことになるのが惜しいと思うようになった。

 反面、今月に入ってから犬の飼育用品一式にゲートにクレートに、ブリーダー宅への何往復分ものガス代やホテルの宿泊費、トレーニングクラスの月謝に医療費、子犬用の健康保険プランに・・・・・・と、あらゆる箇所で散財してしまったので早々と仕事やバイトに明け暮れたい気持ちもヤマヤマなのだ。。そこで、クレートトレーニングを急いでやる必要が出てきた。基本クレートなど入りたくない子犬に、静かにクレートに入っていてもらうには?トレーニングやオヤツも有効だけど、やはりまずは犬自身をクタクタに疲れさせておくことがいいと思う。

 写真のかわいい若犬「ボニー」に出会えたのは、上のようなわけで、コディと共にバージニア州アレクサンドリアという古い波止場町を歩いていた時だ。通りを行く姿に何か特別なものを感じたので、歩み寄って「この犬は何という種類ですか?」と聞いたら飼い主のオジサンとその彼女が大変嬉しそうに(本当にめちゃくちゃ嬉しそうにしていた)、「パタデールテリア」という犬だと教えてくれた。

 一見テリア系の雑種と思われることが多いというこの小さな犬は、ネズミとり専門の作業犬として、非常に古くからイギリスで使われてきたという。作業能力の追求のために良い犬の血を取り入れるので犬種というより「タイプ」に近いようだ。ボニーの飼い主のオジサンは、イギリスで素晴らしい成績をもつ犬を個人輸入してここ米国で繁殖しているのだという。オジサンはさらにこの犬の特技を生かして、ワシントンDCエリアのオフィスや建物で害獣駆除を行う会社まで設てたのだという。現在10数頭が実際に働いていて、ボニーも含む数頭の若犬たちが未来のマスター・ネズミ捕りとなるべく訓練を受けているという。ほかにネズミの通り道の探知、南京虫(ベッドバグ)の探知も行うという。とても面白いアプローチだと思う。


出かけるまえ、おべべを着たコディ。残念ながら記念撮影のみとなった。
本人はすこぶる毛深いため寒さは平気。


 写真には残していないがもうひとつ印象深かったのは、犬種の説明をしながらオジサンがボニーのシッポを掴んで、ヒョイと地面から持ち上げた事だ。今まで見た事のない犬の持ち運び方(?)だった。知らない人が見たら虐待と思えるような持ち方だが、作業中、穴や狭い隙間に潜り込む犬を効率よく引き上げる、パタデールテリアの間では普通に行われているハンドリング法なのだという。犬の方も勝手を分かっていて、持ち上げられた瞬間手足を縮めて顎を引き、すっかりコンパクトになってぶら下げられていたので感心した。これはそもそも犬が軽くて小柄な事、また仔犬の頃から練習を繰り返すうち尾の付け根の軟骨が丈夫になっていくことで可能になるそうである。

 オジサンによると、パターデールテリアはコディ(シャイロ・シェパード)と同じく、AKCに公認された犬種ではないのだという。オジサンはまた、作業性能が最大にして唯一重要なこのテリアにとってAKCに認められ、コンポジショニング(ショーイング)の選択肢が出来る事は犬種にとってはマイナスであるという。そういえばコディを迎えるまでに話した複数のシャイロ・シェパードのブリーダー達も、ほぼ誰一人として「AKC公認」をゴールにしている人は居なかった。公認犬種になると同時に玉石混合のファンとブリーダー層が現れて、犬種自体の品質に格差が生まれていくことは、犬の歴史上何度も繰り返されたことである。

 一生展覧会のスポットライトに当たることのないボニーだけれど、道を行く犬達の中でもひときわ輝いていたように思う。永遠に止まらないシッポと、『自分が生まれてきたわけを知っている』とでも言うような、あのいきいきとした瞳がそう思わせたのかもしれなかった。



2015年3月9日月曜日

仔犬がきた



 雪深いペンシルバニアの山奥から南へ数時間、車の荷台でコトコト揺られて家に来ました。大きさのせいか、顔のせいか、あまり「犬の赤ちゃん」というかんじがしないんですが、シャイロ・シェパードのオスで生後約9週、名前はKodiak(コディ)としました。性格は優しい犬ですが、突然大胆な独立心を見せることもあるので、コントラストが面白いと思いながら観察しています。

 冬生まれらしく雪が大好きで、自宅の裏庭の雪を嬉しそうにシャクシャク、ちょっとづつ食べていたんですが、ここ数日ぐっと春らしくなったことで雪が溶けてしまいました。どうするかなと見ていたら、今度は雪の下から出てきた「コケ」は食べられるかどうか、果敢にチャレンジしているようです。裏庭ではボールやタオルなど、たまにですが何かを持ってきてくれます。今日はコケを食べた後、3センチくらいの小石を拾って届けてくれました。朝と夕とでは大きさが違うと感じるくらい、めきめきと猛烈なスピードで成長しています。

 はたして15年ぶりの仔犬育て、うまくできるだろうか。まずは自分にとっても、この犬にとっても、家庭にとってもひとつの転換点となるだろう、半年後の9月末を笑って迎えられるように頑張りたいと、気合を新たにしました。





2015年3月4日水曜日

KUSHAKUSHAKUN




 心のなかで「クシャクシャ君」と呼んでいる犬が来た。クシャクシャ君は見てわかる通り、生まれついてのくしゃくしゃシルキーヘアが、常に3倍速で活動しているおかげで加速度的にさらにくしゃくしゃしていくという、なんとなく宇宙の定理を想像させる犬だ。この犬はとても小さく、ラットテリアと、チャイニーズクレステッドドッグと、あと何かのミックスだという(飼い主は「サモエドも入っている」と主張しているが自分は「たぶんそれはない」と思っている)。

 クシャクシャ君はなぜこんなにもくしゃくしゃになってしまうのか?という問いは、なぜ彼は常に走り回らねばならないのか?という問いと、連結している。その理由は、クシャクシャ君が勝手に決めた彼の職業による。貰われてきたその日から、クシャクシャ君は「人間のお母さんをまもる」という事に、その小さな胸いっぱいのパッションがバーニングなのだ。クシャクシャ小宇宙の真ん中にぽっかりと浮かぶ「人間のお母さん」の衛星である彼は、いつも彼女の周りをくるくる周回している。誰かが不用意にお母さんに近づきすぎれば、口を小さなo(オー)の形にして、空に向かってキャオーン、キャオーン、と警報する。なりふりなんか文字通り 'out of universe'でかまってなどいられないのだ。

 そんな、他人にとっては若干迷惑なクシャクシャ君だが、「人間のお母さん」に鼻からしっぽの先まで溺愛されて、とても幸せな毎日を送っているようだ。二人だけのユニバースが、いつまでも平和で満たされている事を願っている。