あっという間に3月になりました。件の仔犬達はもう8週目に入る所だそうで、ここのところあらためてベッドの脇に積んであった「仔そだて本」数冊をひっぱりだして夜な夜な、近所の定食屋さんに入り浸り、読んでいた。そこで、ホラーな事実に気付いてしまったので、今日は、その事について書こうと思います。
気付いた事と言うのは、イヌの一生にとって一番感受性の豊かな時期(=最も効果的に社会化できる時期)は、飼い主が子犬を家に連れてきてからひと月ほどで終わってしまうという事実。それは、複数のジャーマンシェパードのブリーダーや飼い主達に勧められたThe Art of Raising a Puppy(写真の本)を読んでいた時、その成長段階ごとの説明を見ていわゆる「真の社会化期」って、意外と短いなと思ったのが発端だった。そこで一般に言う「社会化の臨界期」の厳密な時期についてがぜん気になりだし、調べたところ、Dog Actuallyというブログマガジンの史嶋桂さんの書かれたコラムにこの頃の発達についてわかりやすくまとめてあったのを見つけることができた(灰字部にリンクしました。これから仔犬を飼おうと思っている方におススメの記事です)。以下は読書の覚書もかねて、「生後0日から4か月めまでの間に子犬の脳裏で何が起きているか」について、手持ちの本やウェブサイトで読んだことを自分なりにまとめたものになる。
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生後0~13日目まで
仔犬は嗅覚、触覚にまつわる単純な記憶以外を学習する能力はなく、日常の90%の時間を寝て過ごしている(起きていても寝ていても脳波に変化がない)。しかしこの時期の終わりごろから徐々に個体差らしきものが出てくる。この時期人間のハンドリングによって日々仔犬が「適正なストレス」にさらされることが、諸説あるがその後の社会化に一定の効果を生み出すと考えられている。
生後13~20日まで
12日から15日目までに子犬の目が開き、仔犬の感覚が急速に成長する時期に入ったことを知らせてくれる。感覚器の発達と共に、仔犬達は自分の今居る環境や、外界からの刺激に対してずっと繊細になる。仔犬は自力で棲みかの中で「冒険」を始めるので、様々なオモチャ等に触れる機会を与えられるようにする(このあたりが社会化期のぼんやりとしたはじまり、と言う気がする)。
ここでも子犬に「適正なストレス」を与えることが重要視される。例えば足先をつまんだり、体重計の冷たいプラスチックの表面に乗せたり、仰向けにひっくり返すなど。これらのプロセスを行った後は、仔犬をやさしくゆっくり撫でて落ち着かせ、ストレスとなでられる経験をセットで印象付けるようにする。ここで、人の介入や触られることによく慣らしておくことが、後でイヌの体のケアや獣医師の検診をずっとラクにする。
生後3週間~12週間(三か月齢のおわり)まで
真の社会化期の到来。その犬が一生を通して受け入れるべき物事は、全てこの時期に親しまされておく必要がある。この時期の社会化は主に2つの段階に分けられる。
フェーズ①:犬同士の社会化期
生後4~6週間の間に訪れると考えられている、母犬や兄弟との重要な交流の時期。仔犬たちはこの時期、与えられた棲みかから出て他の兄弟たちと遊ぶようになる。ここで様々な重要な事・・・個体同士のコミュニケーションの仕方や、他者に対する力加減を学ぶ。5週目の半ばころ、子犬はそれまでの母犬だけにフォーカスした生活から徐々に「それ以外の世界」へと興味を移行していく。
犬同士の社会化と並行して、仔犬たちは自分の「においのポスト」を設定し始める。これはトイレの場所を自分で決め、自発的に巣を離れて排泄し、寝床を綺麗に保とうとする本能的行為である。だからこの時期に不衛生なケンネル等で生活しなければならなかった子犬は、あとで排泄の問題を抱えることが多い。
フェーズ②:人との社会化期
生後5~12週間の間に訪れると考えられている。一般的に社会化の臨界期と言われている。仔犬達にとってニンゲンとは、母や兄弟との新睦を十分深めたあとに、慣れ親しんだ棲み家の果てで出会い、さらにそこから外の世界へと導いてくれる存在になる。仔犬はここで「人間社会のものごと」、たとえば変わった場所や犬以外の生物、聞いたことのない音や触れた事のない物に対して十分親和性を深めていく必要がある。特に5週から7週目までの間は意識的に毎日違う人々を家に招き、仔犬と遊んでもらう必要がある。毎週グルーミングセッションを設け、子犬が体のどこを触られてもへいちゃらなようにする。また、人との社会化期とはいえ、この間も仲間の犬達とたくさん遊ぶことは、その犬の一生涯を通して大事な意義をもつ。この時期の後、仔犬は外界のものに対して懐疑的な態度で挑む(一般的に「恐怖期」とよばれる)時期に入る。
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ここまでの内容を見てみると、自分が仔犬の最初の一月用に「社会化手順表」みたいなのを作成していて、気にしすぎかな・・・・・・と思っていたのが、あながち悪いアプローチでもない気がしてきた。特に、防衛本能に優れた護衛犬種やシェパード系統の犬は、社会化期の終わりが他犬種と比べてはっきりしているという話を色々なところで耳にするので、がんばりどころだ。うちの犬は諸事情により9週目近くなってから家に来ることになったので、最も効果的に社会化出来る期間は実質、3週間と限られている。時間をなるべく有効活用するために、計画的にがんばりたい。
気にしすぎ、はナイと思います!と、社会化不足犬と暮らす私は声を大にして言いまーす(笑) ご紹介の本、何年か前に仕事で行った際、アメリカの本屋さんでベストセラーとして並んでいるのを見ました。旅先で本屋さんに立ち寄るのが習慣になっているのですが、素敵な表紙だな~と写真を撮ったのでよく覚えていて。懐かしいです。
返信削除日本でお世話になったトレーナーさんが訓練犬としてマリノアを育てていて。まさにお書きになっている理由から少し早いタイミングで仔犬を迎えていらっしゃいました。できるだけたくさん他人に会わせたいから見に来て~と言われ、喜びいさんで会いにいったのですが、まあものすごいテンションと噛みと! 仔犬なのにまったく可愛げがないところが、可愛かったです。あ、でもちゃんと優秀にすくすくと育っているそうでーす。
>TOMOMITさん、コメントありがとうございます^^
削除犬笛のエントリー、とても楽しく拝見しています。
気にしすぎは、ナイですか!自分は友人や家族にはよくオーバーアナリティカル(分析過剰?)とか言われるもので、今回も意味なく細かくやりすぎなのかと、自信を失いかけていました。でも、TOMOMITさんのコメントを読んで自信をとりもどしました(笑)。
本もご存じだったんですね。この緑の表紙、惹かれるものがありますよね。仰る通り犬育ての本としてはベストセラーかつ、ロングセラーなんだそうで、ジャーマンシェパードのブリーダーに推薦されてこの本と、もう一冊「How to Be Your Dog's Best Friend」をゲットしました。自分は恥ずかしながら(外国に住んでいるくせに)英文の読みが遅く実はまだ読了できていないんですが;、ヒマを見つけてちょっとづつ読み進めています。
マリノアですか~いいですね~!!その犬も、訓練士さんに飼われてきっと楽しい日々を過ごしてる事でしょう。ベルギーシェパードは、実は私もとても好きな犬種なんですよ。日本に居た時から好感がありましたが、決定的に好きになったのは、ベタですが、在欧時にベルギーの駅で働いているのを見てからです。実はグローネンダールに関しては今まで数度ご縁があって、「飼おうかなあ~」という所までも行っていたんですが(品評会や競技会を見に行ったり結構本格的に懸案していた)、やはり精神的にも肉体的にもハイメンテナンスな犬達なので、今自分が用意してやれる環境では手不足と思い、断念しました。あら・・・。好きな犬種の話でつい、長くなってしまいました;