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2025年10月6日月曜日

「幻の果物」ポポーをとりに行く




【ポポー】学名:アシミナ・トリローバ(Asimina triloba)。ポポー(pawpaw)、ポーポー、カスタードアップルなど様々な地方名で呼ばれる北アメリカ東部原産の小型落葉樹。熟した果実は食用となる。実はクリーミーで独特の味わいがある。植物の大部分、果肉にも神経毒アノナシンが含まれるので多量を長期間にわたって消費することには注意が必要(※後述)。




 急に秋めいてきました。

 北バージニアの田舎の当地でも木々の葉が色づき始め、早いものでは落葉がはじまっています。気温は22℃。森でがさごそするのには絶好の日よりです。たわわに実った木の実類がひと風ごとにバラバラ落下してきたりして雑木林はかなりにぎやかです。今日潜入したお山のどんぐりは当たれば確実に痛みを感じるサイズでちょっと恐怖を感じました。そんな場所で表題の「ポーポー」(ポポー)を探し、種をとりたいと思います。


夏前に生まれた子牛もこんなに太ってきてます!


 さて、早速ポーポー(ポポー)の木を発見しました!

 このように東海岸の雑木林の中にさりげなく生えている比較的背丈の低い木です。「日本の山のホオノキにちょっと似てるなぁ」と思った方、そうなんです。ホオノキとこのポーポーは同じ「モクレン目」から枝分かれした(ホオノキ→モクレン科、ポーポー→バンレイシ科へ)さほど近縁ではないけれど全く無関係でもない、親戚筋の木、という感じでしょうか。




 この時期の雑木林を散策していると時折「ぷぃ~ん」と甘い香りが漂う瞬間があります。ポーポーエンカウント率上昇中のサインです。そこで周囲の地面によく目を凝らし、落ちた実を探します。ちょっとした切り株や倒木の上なども見ます(動物の齧りかけが置いてあることがあります)。ありました。腎臓みたいな微妙な形とサイズ、幻のフルーツ、ポーポー(common pawpaw)です。


皮も実も簡単にほぐれます


 何とも言えない甘味。「バナナとマンゴーに、洋ナシとバニラエッセンスをちょっと足したような味」と言う人もいます。まさにトロピカルフルーツの味なんです。冬は厳冬、夏は酷暑・多湿のここ東海岸の地で、人の手もかりずに勝手に生えてるのが本当に不思議な味わいのフルーツです。

 果実にはタンパク質やビタミンA、Cが豊富な他、鉄分やマンガン、ポッタジウム、マグネシウムなどのミネラル類が豊富に含まれ、やや似た味わいのバナナと比較するとかなり栄養価が高いといえます。特にイソロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、バリンなどの必須アミノ酸が多く含まれているのは、市場でよく見る果物では他にアボカド位しか思い当たらない、かなりおもしろい特徴です。

 ポーポーは写真のように地面に落ちて腐りかけたときがいわゆる「完熟」で、最もおいしい状態です。木の上になっている見映えが良い状態のときはまだ熟しきっていません。1950年代、アメリカで農作物のオートメーション化・大量生産化の波が起こった時、ポーポーはこの「長持ちしない」「輸送に耐えない」という特徴のせいで商業的な成功には至りませんでした。




 採集しもちかえった種を水につけています。

 ポーポーは自家受粉しないので(自家不和合性)、育成したとしても全て実るとはかぎらないんだそうです。またできた果物も樹の形状的に人の手で収穫する以外に効率的にもぐ方法がなく、いろんな意味で大量生産に向かない果物です。現状ポーポーを味わえるのは、木を所有している人、ポーポーの実のなる森にアクセスがある人、毎年旬のわずかな季節に出回る小数の果物を見つけられた幸運なひと、の3パターンに限られます。


↑ ポーポーの種子(中央) ↑
※いろんなプロジェクトが同時進行中

 この「毎年旬のちょっとの期間しか手に入らない」というのも、あながち悪くないなあ、と思ってます。というのも、実は近年の研究でポーポーはじめ、バンレイシ科のフルーツの果肉に含まれる「アノナシン」という化学成分が、脳神経を損傷することで病変を引き起こし、特定のタイプのパーキンソン病であったり、認知障害の悪化を招く可能性が分かってきているからです。

 これらはラボで抽出された純粋なアノナシンを使っての調査の結果であり、実際のところ摂取された果物からアノナシンがどれだけ人体に吸収されているのか?などはまだまだ不明なことだらけみたいなので、一概に「ポーポーが危険なフルーツだ」という結論づけはしなくてよいと思います。

 が、ジャムやジュースなどの濃縮した形で常時・または大量に摂取したり、冷凍したりして通年食べ続けるのはよした方が良いのではと、私は思っています(南部のおじちゃん達の中には「タネは絶対食べるな」と言う人がいることも書いておこう)。本来、季節のものを、その季節に摂ることは健康上のリスク回避という大きなメリットがあったんだなと思い出させられました。

 知らなかったんですが近年、ポーポーの日本での栽培数も増えてきているようです。「ファーム池の沢」さんのウェブページが勉強になったので、参考として貼っておきます。「趣味の園芸」のサイトにも特設ページがあったりして、日本での知名度があることに驚きました。食べた果物のタネから7年かけて自分ちで収穫してる人までいて、すごい!と感動しました。いろいろ読むに、ポーポーには品種があり、別品種どうし接ぎ木して、木の生育のゆっくりさや自家不和合性の問題をクリアしているようです。なるほどなあと思いました。


今日のまとめ➀
ポポーは美味しく、歴史ある果物で、見つける過程も楽しい。

今日のまとめ②
季節の食材を、旬を意識して少量ずつ食べるという昔ながらの行いは、
リスク管理上よい行いである。

今日のまとめ➂
自然の中にある食材、珍奇な食材は、自分でよく調べてから食べる。


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