2015年1月19日月曜日

きつね





アカギツネ(Vulpes vulpes)

 今の家に住んで2年目になるけれど、いつもすぐ傍に奴らがいることはうすうす分かっていた。それは、夜中に裏の雑木林から奇怪な叫び声が聞こえてきたりだとか、ウォーキング中、「ミニチュア犬フン」という形状の排泄物に出会ったりだとか、月曜の夕方、そとに出したゴミ袋に火曜日の朝小さな穴を見つけ、そこから古くなった野菜の切れ端が半分引き出されたまま、いかにもがっかりした風に置き去られていたりしたから。でも、今日、初めて朝の光の中で対面したその生物は、赤いふかふかのコートを着たほんとに素敵な生物だった。



2015年1月14日水曜日

仔犬がくる 1

 数か月間にわたって連絡を取り合っていたブリーダーから、仔犬が無事にうまれたという連絡が届いた。嬉しーい!と喜びのビッグウェーブが来るかと思いきや、案外そういったものはなく、むしろ「あーこれからだぞ」と、これから試合にでるスポーツ選手のような高揚したような、憂鬱なような、ヘンな気分となった。この仔犬は簡潔に言えば、ジャーマンシェパードのミックスになるけれど、最終的に先代のドーベルマンよりも大きくなるので、しつけに間違いは出来ないという事が大きいかもしれない。気質によっては全米セラピー犬協会(TDI)の認定をとることも考えているので、今まで自分がゴロゴロしたり、ダラダラしたり、外の小鳥をボーっと眺めてにやにやしていた幸せな時間の多くは、これからはそういうトレーニングに費やされることになるという予感があるのも大きい(それはそれで幸せな事ですが)。ともあれ、うちに仔犬が来るおおよその日にちが分かったので、そろそろ飼育用具を揃えないといけなくなった。手始めに車のハッチバック部をまるごと覆えるカバーをオーダーし、その他の備品を買いに出かけた。備品と言うか、自分自身が犬のおもちゃが好きなので、気付けばおもちゃばかりででしたが・・・、、、

 個人的な経験上、使役犬とか牧羊犬タイプの仔犬のチュー・トイを選ぶときは、素材や、硬さも硬化ゴムのものから柔らかくボヨンボヨンするようなものまで、いろいろな種類があると便利だ(家庭犬の場合)。早いうちから自分の犬の好みを明確に把握することがそのあとに続くトレーニングにとって重要な意味を持つ。こういう類の犬はまた、頭の回転が速く力もあり、基本的にヒトにフォーカスするようになっているので、「ただ噛めるだけ」とか「振り回せるだけ」のおもちゃではすぐ飽きる事にも気を付けたい。くいしんぼが多いからおやつがつめられるようなものはいいと思う。

 これを踏まえて、退屈凌ぎようのおもちゃにプラネット・ドッグ社の「スポーツ/アイスホッケーパック」と、バイオニック社の「スタッファー」も購入した。どちらも特殊なゴムで出来ていて水に浮き(何かを詰める場所がある)、食器洗浄機で洗え(だいじですね)、いらなくなったらリサイクルが可能となっている。バイオニックのおもちゃは個人的に特に好きなもので、このゴム素材が特殊で三次元的に入り組んだ構造のため、ものすごく丈夫な割に非常に柔軟で弾んだりする。形もよく考えられていて、たとえばこの「スタッファー」は餌の粒やオヤツがゆっくり出てくるような形と、二種類の大きさの穴を備えている…、……、、、とか、求められてもいないのに延々と犬のおもちゃの性能についてオタク特有の早口でうんちくを話す性質も、子犬が来たら忙しさで暫くは引っ込むかもしれません(笑)。周囲の人にとっては良い事と言えるでしょう。

2015年1月9日金曜日

PERO



 現在管理人の住む、ワシントンDC郊外、バージニア州北部のまちは、日本の仙台くらいの緯度にあり、今外は寒い最中だ。すると、日本の友人の管理するケンネルの敷地内の倉庫に、勝手に「巣」を作って、そこで寝泊まりしていた数年前の今頃をふっと思い出す。その犬舎には数種類の犬が飼われていたが、その中でも写真のマスチフ犬と、なぜが気が合ったようで、仲良くなることができた。

 この犬は、ローマ時代の戦闘犬を思わせるような、正真正銘の猛犬だ。体重は60キロをゆうに超えていて、手はコンビニのクリームパン位あり、そして敷地内に入ってくるもの・・・人でも、動物でも、トラックでも、に最初に猛然と喝を入れに行くのが彼の仕事だった。彼を見ていて正直、都市部や郊外の一般家庭でこの犬を飼うということは考えられなかった。これだけ防衛に対して熱意を燃やす犬を、そういう場所で飼う事にはリスクがありすぎるし、獣医や散歩に連れ出すだけでも大変な労働を要するというのは明らかだった。

 しかし一歩喧騒の都市部を離れ、人気のない畑と、北風だけが吹き抜ける湾に囲まれた丘に建つ犬舎で過ごしたその年の正月、犬達の世界ほど「適材適所」がクリティカルな意味をもつ所はないと気付かされたのだった。そこでは、そのマスチフ犬一頭のおかげで、敷地の平穏は完全に守られていた。風呂なし、ガスなし、電気ギリギリありというその場所で、毎夜まったくの夜闇に閉ざされた中で幾夜も、幾夜も安心して眠ることが出来たのは、自分の寝袋のすぐそばにこの犬の存在を感じていたからというのも大きかったと思う。そんな生活を暮らす時、彼ほど心強い味方はいなかった。きっと大昔のローマ人もそう思っていたに違いない。



2015年1月4日日曜日

奇跡の融合



 ハワイで念願のセミリタイヤ生活を手にした家族から、写真が送られてきた。常夏の楽園ハワイは、「2匹のポメラニアン」と「おじさん」という、一見座標の正反対の場所に位置するかのような生命体同士が、奇跡の融合を遂げる場所でもあるようだ。この、醸し出す空気感のこの完全なるハーモニー。ただ事ではない調和具合だ。




2014年12月31日水曜日

子犬の見る夢



 少し前にブリーダーさんから送られてきた写真。この宇宙みたいな場所にプカプカしている、ぼんやりとした膨らみのうち、どれかが家へやってきて、そのうちお手やオスワリを覚え、多分家具を齧り、ソファをやぶり、トイレットペーパーと新聞紙をびりびりにする事を思うと、なんか不思議である。彼らは今頃、いったいどんな夢を見ているのか。