2018年5月10日木曜日

セラピードッグのテスト



 ひとつ前の記事で書いた通り、アメリカで受けたセラピー犬のテストについて少しメモしておきたいと思います。まず、私と私の犬「コディ」が受けたテストは、Therapy Dogs International (TDI)という非営利団体の行う適正テストです。アメリカには沢山の登録団体がありますが、大まかな印象で言うと、歴史が長く社会的信用度が高いのがTDI、比較的新しく動物介在活動・療法全般に特化したのがデルタソサエティのPet Pertners Program(PP)というイメージがあります。シェパード・ピープルは伝統的にTDIを受ける人が多いようですが、それは1976年にTDIが最初の動物介在アクティビティの訪問を始めたとき、オリジナルのメンバー全員がジャーマンシェパードを使っていたことと関係あるのかも知れません(協会のマークもGSDです)。TDIテストの観点(PDF)と、PPテストの観点(PDF/p59-p85)に、それぞれの細かいルールなどが載っているので、興味のある方は、読んでみて下さい。私はPPのことはあまり詳しくないので、ここから先はTDIにのみ焦点を絞って書きます。長いのでお茶とおせんべいを用意してお読みください。


 TDIのめんどくさい面白いところは、TDIに認定された評価員の所に自分から連絡を取り、出かけて行ってテストを受けねばならないところです。この評価員が近場に住んでいればいいですが、車で往復四時間しないといけないような所だったり、それが天候不順で前日の夜にキャンセルされたり、テストの日程をたてるのが大変でした。自分達の場合は、メリーランド州シルバースプリングにあるCapital Dog Training Club of Washington, D.C.で行われるテストに運よく滑り込むことが出来ました。試験の費用は25ドルで、人手がいるテストの割にとても安いと感じました。

 試験場はちょっと暗い感じの倉庫を改造したところにあり、東海岸ではよく見るドッグトレーニングクラブのセッティングです。見知らぬ薄暗い部屋で不安に感じて、クンクン始まる犬もいそうだと思いました。今回の試験に参加した犬は5頭で、コディの他にはマルチーズ系の小さなミックス犬、ランドシーア、すごく育ちがよさそうなゴールデンレトリバー、若いジャーマンシェパードがいました。

 テスト内容は基本、CGCAで出された課題に毛が生えたようなものですが、意外と基本のヒールウォークが出来てない犬が多いことに気付きました。おそらく普通のナイロンリードを普通の首輪(か普通のハーネス)に留めたものでテストするルールで、犬の歩き方に補正が一切きかないせいじゃないかと思います。また、テスト中はおやつなどのご褒美も一切禁止なため、食い物命タイプの犬も、苦戦するかもしれません。コディはといえばテスト本編とは関係ない、建物に入る前の「おしっこ」の指示を出したのになかなかトイレすることができず、ヤキモキさせられました。普段と勝手が違うと、こういう細かいことで躓く事もある好例でした。

 もうひとつきつかったのが、テスト時間の長さです。全行程で1時間半くらいかかっていました。最初は犬達も元気よくがんばっていましたが、一時間過ぎる頃になると、みんな疲れてきます。そんな時に無慈悲に床の上に出される、油の光る大きなペパロニが何枚も乗ったお皿と、新鮮な水の入ったボウルです。「leave it」がどれくらい効くか調べる課題ですが、犬は腹ペコでハンドラーはグロッキーなので、多くのペアがペースを崩されまくっていました。あとで考えたのですが、これはマイルドな心理的負荷のかかった状態で、どのくらい犬がリラックス状態を保てるか、ハンドラーの要求に応えられるかを調べる格好のテストだったと思います。「live it」についてはまた、評価員の方が「病院やホスピスなどの環境下では、床に血痕や、薬品の類が落ちている可能性もあります。lieve it はあなたの犬の命と健康を守る最重要スキルのひとつです。」とコメントしていたのが印象に残りました。


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 疲れると素の性格が出てくるのは人も犬も同じなようで、テストを進めていくうち、犬達にもいろいろな事が起きていました。ジャーマンシェパードの子はすれ違う別の犬にメンチを切って、落とされてしまいました。ランドシーアの子は格好のセラピー犬候補と思われましたが、車いすの評価員が持っていたクラッカーを、見ていて爽快になるほどムシャムシャ食べてしまい、これも、「さらなる服従訓練の余地あり」として落とされていました。

 特に印象的だったのはマルチーズmixのペアでした。この犬はテストの中盤当たりから犬がストレスを感じているのが明らかで、ハンドラーの指示にあまり従わなくなっていったのですが、飼い主の人は「やりなさい」と、コンスタントに犬をプッシュしていました。結果的に最終テスト前に「あなたの犬は、このような作業をやりたいと思っていないようです」と、評価員にはっきりと指摘されていたのですが、その説明が、「テストではこのような状況を『耐える』犬ではなく、このような状況下でもハンドラーの要求を聞く事を楽しみ、人と関わりあう事を楽しめる犬をフィルターしています。『耐える』ことは必要ではありません、それはあなたの犬にとって体験する必要のないストレスです。彼らにはセラピーとは別の社会貢献への道があります。」という、すごく納得できるものだった。アメリカの人間の学校などでも感じるこの「がまん」してわざわざ得意じゃない事をする(そして能率をさげる)よりも、無理なくできること・得意なことを生かしてコミュニティを助けていけよという、極めてアメリカ的アプローチが犬にも適用された瞬間でした。

 しかし、私も受けるまでこんなに長く感じるとは思わなかったので、TDIのハンドブックに「テストを受けられる犬の年齢は、ミニマム1歳から」と書かれている理由が分かったような気がしました。犬のトラウマ回避策なのでしょう。実際にセラピーワークを模した題材の中でテストしていくと、普通の犬にとって予想以上にストレスフルなものがあるし、ハンドラーの方も、実地へいけば自分なんかじゃ想像もつかないようなタフな人生の問題と戦っている人々に接することもあるだろうから、犬人ともに心身のスタミナがないとだめなんだと思いました。とまれ、ここまで残った例のピカピカのゴールデンレトリーバーとコディは、本物の子供を交えて行う最終課題を終え、全ての課題をクリアすることが出来ました。晴れて、テストに通ることが出来たのです。

 もちろんこのテストに通ったからと言って、明日から「うちの犬はセラピードッグよ!」と吹聴するのは、時期尚早と言えるでしょう。今日はただ、自分の犬にセラピーワークをしていく素地が十分にあるとわかっただけで、ここから本物のセラピードッグとなっていくには、今後も能動的に様々な活動の場を作って、人犬共に経験を積まねばなりません。現時点で、自分がどこまでそういった活動に参加できるのか分からないですが、まずは一回体験できるように、知り合い等にあたってみようと思いました。

 今回のテストを受けて嬉しかったのが、全ての評価が終わった後「今後の練習の参考にするので不十分だった箇所を教えて欲しい」と評価員の方に聞きに行ったところ、“your dog performed nearly perfect.(ほぼ完璧に出来ていました。)”と言われた事です。人間のカップルとかでもそうかもしれませんが、犬と飼い主も、普段から常に一緒に過ごしていると完璧とは程遠いところばかりに目がいってしまい、ついつい過小評価しがちです。でもこんな風に見ず知らずのドッグトレーナーの人にそう言ってもらえることで、コディも犬なりにがんばってるんだなと再認識し、感謝することができたので、他人の目は大事だなと思いました。

 それと余談ですが、ここでも訓練系のゴールデンレトリーバーのすばらしさに感銘を受けました。本当に素直で優しくて、トレーニングを愛し、ストレスを許し、人を許し、とにかく海の様なハートを持った犬たちです。コディと共に最終試験に進んだ一頭もそんな感じの犬で、あとでオーナーの人に聞いたら、ゴールデンだらけのオビーディエンス・トライアル一家で4頭目のセラピー犬だそうです。レトリーバーを飼ったことがないから分からないですが、家に帰ったらあのやきたてパンみたいなニコニコ顔が4つ並んでるのでしょうか?想像するだけで癒しだし、最高に楽しそうです。

 



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