2015年3月15日日曜日

BONNIE



 犬を迎えるためにと前々から準備して今月いっぱいとっていた休みも、気が付くと半分が過ぎてしまっていた。最初の頃は「一ヶ月も赤ん坊犬につきっきりでいたらノイローゼになるかも」と懸念していたけれど、ここへきてもうあと二週間しかないぞ!と慌てるとともに若干寂しい気分を味わっているのは、仔犬の成長の速さを目の当たりにしたせいかも知れない。コディは耳をすますと、めきめきと音が聞こえてきそうなぐらいのスピードで大きくなってきている。仕事や用事で家を留守にするようになれば、成長期の一瞬で現れては過ぎ去っていく変化を見逃してしまうことになるのが惜しいと思うようになった。

 反面、今月に入ってから犬の飼育用品一式にゲートにクレートに、ブリーダー宅への何往復分ものガス代やホテルの宿泊費、トレーニングクラスの月謝に医療費、子犬用の健康保険プランに・・・・・・と、あらゆる箇所で散財してしまったので早々と仕事やバイトに明け暮れたい気持ちもヤマヤマなのだ。。そこで、クレートトレーニングを急いでやる必要が出てきた。基本クレートなど入りたくない子犬に、静かにクレートに入っていてもらうには?トレーニングやオヤツも有効だけど、やはりまずは犬自身をクタクタに疲れさせておくことがいいと思う。

 写真のかわいい若犬「ボニー」に出会えたのは、上のようなわけで、コディと共にバージニア州アレクサンドリアという古い波止場町を歩いていた時だ。通りを行く姿に何か特別なものを感じたので、歩み寄って「この犬は何という種類ですか?」と聞いたら飼い主のオジサンとその彼女が大変嬉しそうに(本当にめちゃくちゃ嬉しそうにしていた)、「パタデールテリア」という犬だと教えてくれた。

 一見テリア系の雑種と思われることが多いというこの小さな犬は、ネズミとり専門の作業犬として、非常に古くからイギリスで使われてきたという。作業能力の追求のために良い犬の血を取り入れるので犬種というより「タイプ」に近いようだ。ボニーの飼い主のオジサンは、イギリスで素晴らしい成績をもつ犬を個人輸入してここ米国で繁殖しているのだという。オジサンはさらにこの犬の特技を生かして、ワシントンDCエリアのオフィスや建物で害獣駆除を行う会社まで設てたのだという。現在10数頭が実際に働いていて、ボニーも含む数頭の若犬たちが未来のマスター・ネズミ捕りとなるべく訓練を受けているという。ほかにネズミの通り道の探知、南京虫(ベッドバグ)の探知も行うという。とても面白いアプローチだと思う。


出かけるまえ、おべべを着たコディ。残念ながら記念撮影のみとなった。
本人はすこぶる毛深いため寒さは平気。


 写真には残していないがもうひとつ印象深かったのは、犬種の説明をしながらオジサンがボニーのシッポを掴んで、ヒョイと地面から持ち上げた事だ。今まで見た事のない犬の持ち運び方(?)だった。知らない人が見たら虐待と思えるような持ち方だが、作業中、穴や狭い隙間に潜り込む犬を効率よく引き上げる、パタデールテリアの間では普通に行われているハンドリング法なのだという。犬の方も勝手を分かっていて、持ち上げられた瞬間手足を縮めて顎を引き、すっかりコンパクトになってぶら下げられていたので感心した。これはそもそも犬が軽くて小柄な事、また仔犬の頃から練習を繰り返すうち尾の付け根の軟骨が丈夫になっていくことで可能になるそうである。

 オジサンによると、パターデールテリアはコディ(シャイロ・シェパード)と同じく、AKCに公認された犬種ではないのだという。オジサンはまた、作業性能が最大にして唯一重要なこのテリアにとってAKCに認められ、コンポジショニング(ショーイング)の選択肢が出来る事は犬種にとってはマイナスであるという。そういえばコディを迎えるまでに話した複数のシャイロ・シェパードのブリーダー達も、ほぼ誰一人として「AKC公認」をゴールにしている人は居なかった。公認犬種になると同時に玉石混合のファンとブリーダー層が現れて、犬種自体の品質に格差が生まれていくことは、犬の歴史上何度も繰り返されたことである。

 一生展覧会のスポットライトに当たることのないボニーだけれど、道を行く犬達の中でもひときわ輝いていたように思う。永遠に止まらないシッポと、『自分が生まれてきたわけを知っている』とでも言うような、あのいきいきとした瞳がそう思わせたのかもしれなかった。



2 件のコメント:

  1. コディちゃん 日本に住むちび鳩と申します
    貴方の成長を遠い国より楽しみにしております
    どうぞ よろしく (*^_^*)
    わが家には現在 ワンコはおりませんが
    私も夫も大の犬好きなんですのよ
    うぅんとやんちゃになって わしさん を困らせる様子を
    期待しております (^O^)

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  2. 「森の」かんりにん a.k.a.「わし」2015年3月22日 10:08

    ちび鳩さん コメントありがとうございます

    コディは既にやんちゃブリを発揮して大変です。
    特にくさい靴下や、履き古したスリッパに興味を持っているようです、
    今までは脱いだら脱ぎっぱなし・ほったらかしにしていたのですが(笑)
    最近は自分ですすんで脱衣カゴにきちんとしまう様になりました。
    犬が来てから、家の中のガラクタが少し減ったんですよ^^

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