PERO



 現在管理人の住む、ワシントンDC郊外、バージニア州北部のまちは、日本の仙台くらいの緯度にあり、今外は寒い最中だ。すると、日本の友人の管理するケンネルの敷地内の倉庫に、勝手に「巣」を作って、そこで寝泊まりしていた数年前の今頃をふっと思い出す。その犬舎には数種類の犬が飼われていたが、その中でも写真のマスチフ犬と、なぜが気が合ったようで、仲良くなることができた。

 この犬は、ローマ時代の戦闘犬を思わせるような、正真正銘の猛犬だ。体重は60キロをゆうに超えていて、手はコンビニのクリームパン位あり、そして敷地内に入ってくるもの・・・人でも、動物でも、トラックでも、に最初に猛然と喝を入れに行くのが彼の仕事だった。彼を見ていて正直、都市部や郊外の一般家庭でこの犬を飼うということは考えられなかった。これだけ防衛に対して熱意を燃やす犬を、そういう場所で飼う事にはリスクがありすぎるし、獣医や散歩に連れ出すだけでも大変な労働を要するというのは明らかだった。

 しかし一歩喧騒の都市部を離れ、人気のない畑と、北風だけが吹き抜ける湾に囲まれた丘に建つ犬舎で過ごしたその年の正月、犬達の世界ほど「適材適所」がクリティカルな意味をもつ所はないと気付かされたのだった。そこでは、そのマスチフ犬一頭のおかげで、敷地の平穏は完全に守られていた。風呂なし、ガスなし、電気ギリギリありというその場所で、毎夜まったくの夜闇に閉ざされた中で幾夜も、幾夜も安心して眠ることが出来たのは、自分の寝袋のすぐそばにこの犬の存在を感じていたからというのも大きかったと思う。そんな生活を暮らす時、彼ほど心強い味方はいなかった。きっと大昔のローマ人もそう思っていたに違いない。